「歴史認識」公正な議論を 市民団体が申し入れ 長崎原爆資料館の加害展示巡り 

井上館長ら(手前)を前に、申し入れ書を読み上げる市民の会メンバーら=長崎市平野町、長崎原爆資料館

 長崎市が2025年度に予定する長崎原爆資料館のリニューアルを巡り、過去の日本によるアジア侵略など加害展示の削除・縮小を懸念している市民団体「世界に伝わる原爆展示を求める長崎市民の会」は23日、「歴史認識」について丁寧で公正な議論を進めるよう市に申し入れた。
 書面は井上琢治館長と、リニューアル内容を専門的に議論する同館運営審議会の小委員会で進行役を務める水嶋英治委員宛て。小委員会は24日の第2回会合で「原爆投下に至る歴史」を議題にする。井上館長は会合前に、今回の申し入れ内容を全委員7人に伝える考えを示した。
 館内の年表には旧日本軍による「南京大虐殺」に関する表記があるが、過去の審議会会合で保守系団体から表現修正を求める意見があった。市民の会は申し入れ書で「原爆投下へ至った戦争の負の歴史にしっかり触れ、世界の理解と共感を得ることが大切」と指摘。加害展示の必要性を訴え審議会の公募委員(2人)に応募した被爆2世の平野伸人さんが選ばれなかったことに、抗議する書面も併せて提出した。
 22日夜、市民の会の結成集会が開かれ、市民ら約90人が参加。東アジア近現代史に詳しい京都府立大名誉教授の井口和起氏(83)が講演し、「歴史研究者で南京大虐殺があったことに異論を唱える人はいない」と強調。「本当に被害の苦しみを訴えようとすれば、他の被害者の訴えも聞き、共感しなければ」と語り、原爆資料館が議論を通じて相互理解を進める場となるよう求めた。
 市民の会の構成団体は22日加盟した日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)を含め21団体。MICも23日、市に対して「戦争加害を直視した展示継続」を求める要請書を提出した。

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