藍坊主 - 今のバンドを全部ぶつける渾身のツアー・ファイナルを"ロックの聖地・憧れの場所"新宿ロフトで開催!

ステージに向かいながら聴こえてくるお客さんの声に泣きそうになる

──今回のツアーは小田原からのスタートでしたよね。

田中:そうですね。全国を回るツアーはコロナ禍が明けてからは初なんですけど、コロナ禍はライブが全部できなくなってしまって、自分たちで配信機材を用意して“配信をやってみようか”って。そのとき、地元(=小田原)にある姿麗人っていうライブハウスが配信の場所として貸してくれまして、バンドや弾き語りのライブを一緒に配信でやらせてもらって大変お世話になっていたこともあるし、まずはやっぱりここからだなというのがありましたね。

──現在、ツアー真っ最中のタイミングで残すはファイナルの新宿ロフト公演ですが、ツアーの手応えはいかがでしょうか?

hozzy:ムッチャ良いです。ドラムが抜けて(2021年)から、都内のファンの方だと今サポートで入ってくれているHAZEさんが叩くドラムでのライブも見ていただいていたり、あと配信では見てもらえていても、地方を周ることで直接目の前で、生で、ライブを見てもらえることができていて。体制が変わったらどうなるんだろう、ってファンの方も思ってたと思うんですけど、絶対に“前より良い”って思ってもらえてる手応えを毎回どこの箇所でも感じてますね。ただバンドを続けるだけじゃなくて、バンドとしての形をもう1回、今まで以上に良くしたいって皆、思ってたので。それは簡単な気持ちじゃできなかったですけど、(キーボード含めた)サポート・メンバーの力も借りつつ皆でいろいろと相談しながらできているのが功を奏して、バンドとしても良くなってるなと思ってます。

田中:東名阪だけは去年ツアーをやってるんですけど、札幌から福岡まで地方にも行くのは4年ぶりになりまして。最近は(コロナ禍)以前のライブと同じように声を出す準備がお客さん側もできてて。そんなライブも久しぶりですし、ライブが始まるSEが鳴ってお客さんの声が上がるだけでもう泣きそうな気持ちになってますね。以前と同じようにライブができるというだけでまず感慨深いものがあるし、4年前と同じぐらい集まってくれる所も多くて。この4年間、待っててくれたんだな…というのを感じて、それでまた感慨深くなって。だから(バンドの)音を出す前からノっちゃいまくってるので(笑)、それだけで毎回もう、すごいライブができてるなと思いますね。フロアからの声が聴こえるライブって、やっぱり良いものなんだということを新鮮に感じて感動してるということは、(声を)忘れちゃってたところもあるんだなぁ、と。

hozzy:コールがあるというのは、すごく良いものなんですよね。(声出しが)ないならないなりに、その場に集まってくれたということに対して最大限何か良いものをと考えてライブをやってきたんですけど、少しずつ規制が緩和されていく中で最終的に声が出せる、それが緩和されたのは一番デカかったですね。声を聞いて、本当に震える気持ちになって。演奏して音が鳴っているものに対して声で投げ返してくれる、お互いのフィードバックで高まっていくっていうのは(コロナ禍以降)感じられてなかったんだなって。それを今回のツアーですごく感じてますね。

──お2人の表情を見ても充実感がすごく伝わってきます。コロナ禍を経ての今ですが、お2人がこのコロナ禍で感じたことなどを少し聞かせてもらっても良いでしょうか。

hozzy:やっぱり生活というものをしなくてはいけないので、“こうやってお金を稼げるんだ”っていうこととか、今まで見向きもしていなかったことでの発見とかがすごくあって、それはそれですごく面白かったですよね。バンドができなくてただ苦しいというだけではないたくさんの発見があったし、今のツアーはリリース・ツアーなんですけど、曲を作るアイディアとか原動力をずいぶん良い方向で影響を受けたなと振り返ってポジティブに捉えてます。これはいろんな方も言ってると思うんですけど、一対一の繋がりみたいなものがコロナの前よりも…会って飲むとかはできないし、遠方の親戚とかはなかなか会えないけど、逆に連絡を密に取るようなことができて良かったと思いますし。それと自分は怒りっぽいところがあったんですけど、そういうのがちょっとずつ減ってるかもしれないです(一同笑)。単純に歳を取っただけかもしれないんですけど、許せる範囲が広がった感じですね(笑)。イライラしててもソンするだけだな、って。

田中:確かに最近、怒ってるところは見たことない気がするな(一同笑)。いろんなことって本当に当たり前じゃないんだなっていうのを身に染みて感じて、物事の捉え方が…それは誰もがそうだと思うんですけど、それこそライブ1本にしてもその1本に対する感謝の気持ちがより強くなったというのはすごくありました。バンドの運営の大部分を今、自分たちでやっていて、コロナでライブも音源も出せないという中で、お金の管理も含めて何とかバンドがうまく回っていくようにと普段よりも頭を使って考えていて、コロナ禍はそこにかける時間が本当に多かったように思います。

新宿ロフトでの初ワンマン公演は“攻め攻めのセットリスト”に!?

──今、hozzyさんから“リリース・ツアー”という言葉も出ましたが、今年5月リリースのミニアルバム『月の円盤』はいつ頃から制作に入った作品でしたか?

hozzy:コロナ禍に入ってからベースの藤森(真一)が曲の作り溜めをずっとしてくれていて、そのストックとのバランスを見て全体像や方向性を話し合いながら足りないものを作っていく。それをちょうど1年前の夏から本格的に動き出しまして、今年1月までレコーディングをやって、ですね。もう1年経ったんだ、暑かったな…でも今年のほうが、暑いな(一同笑)。

──1曲目「卵」から哲学を感じましたし、聴く側の解釈に委ねられているところが多くあれど、全体的に歌詞を面白く聴かせていただいた感じです。

hozzy:歌詞に関してはメチャクチャ、コロナ禍と関係があると思います。さっき“一対一の繋がり”と言ったんですけど、人と人との距離感は離れても密になった部分があったり、世の中は全部逆説的だなと思って。表に出られなくなった、その分、外に出たときの開放感が増えたりするし、それこそ「卵」は…今メッチャ値上がりしちゃいましたけど(笑)、書いた当時は物価の優等生と言われてて、普遍的なものっていうことで卵をモチーフにしたんですね。

──本当ですか!?

田中:生活に根ざしてるよね(笑)。

hozzy:本当です。あとはいろんな始まりの形だったりとか、絶対に誰にでも手に取りやすいし、卵に抱くイメージも人それぞれ違う、そういうところから卵をモチーフにして。コロナ禍で大変だけど、よくよく考えてみたら、大変なのって人間だけだよね? 他の生き物や動物なんかは普段と変わらない生き方をしてるよな…って毎日思ってて、人間のことばかり考えると本当に辛くなってしまって。それで毎日1回は空を見ることにしよう、って空を見てるとコロナ中だろうが全然変わらない。ニュースは毎日こんなに大変だけど、そんな思いをしてるのは人間だけだよな、って。そういう目線の部分が特に、今回の作品の歌詞にはいっぱい入っていると思います。

──コロナ禍が大変すぎて、そんな目線や考え方なんて持てなかった…と思うのは言い訳がましいですね。常に人間本位で考えちゃいますもの。

hozzy:いや、それはそうですよ。でも、すごい大変だからこそ自己防衛本能が自分の中にはあって、なるべく視点を変えないとしんどくなっちゃった、っていう。だから見方を変えればコロナもチャンスになるだろうなって思うところもあったし、大変でもワクワクできるポイントを探して。田中も配信とか頑張ってたし、バンドが終わるなんてことは一切考えずに、でしたね。今までも“視点を変える”ようなことを書いて歌ってきたし、それは良いことに対して真逆の嫌なことを書いたりとか、昔は特にそういうのが多かったですけど(笑)。音楽を聴いて乗り越えようっていう人たちがいると思うと、自分がなるべくポジティブにいたいなと。実際もポジティブでしたね。

田中:今の話で行くと、自分たちで運営をしているのがコロナ禍では良かったなと思ってまして。事務所とかにいるわけでもないので、たとえばライブができないことで迷惑がかかるとか気を遣うこともないし、周りからのプレッシャーもないですし。俺たちは自分たちとまずは自分たちのファンの人たちの間だけを考えてできることをやれば良いや、っていうのを考えていければ良いよねって。バンドで動けないのであれば、弾き語りであればフットワーク軽く(hozzyと)2人で行こうっていうことができていろんなところに行けて、お客さんも静かに聴けますし。

hozzy:判断も気軽に早くできましたしね。

田中:決まっていた(熊本での)ライブの日に緊急事態宣言が出たとかがあっても、その日に決まっていたセトリで“熊本編”と題して、姿麗人から配信でやったりとかね。

hozzy:そういうことも全部、楽しかったな。

──お2人でのユニット名にも“月”が入っている上、酒飲みには心惹かれる名前ですよね。

田中:「半月酒場」ですね(笑)、飲みながら気楽な気持ちで聴いて欲しいぜっていうところで。飲みながら演奏もして喋って、最初はファンの人たちも“こんなに喋るの!?”って感じだったみたいで(笑)意外なパンチを受けてたみたいですけど、そういう雰囲気だというのを分かりやすく伝えるために“酒場”をユニット名に使いましたね。

──ユニットでのライブは新宿ロフトのバースペースが映えると思いますが、まずは改めて、バンドとしてのツアー・ファイナルが控えています。新宿ロフトがファイナルというのは?

hozzy:ロフトでワンマンっていうのがどうやら、これまでなくて初めてなんですよ。やったような気になってただけで(笑)。

田中:イベントや他のバンドに呼んでもらって出させてもらうことはいっぱいあったんですけど、ロフトでワンマンをやったことがないのは自分たちでも意外で。やっぱり“ロックの聖地・憧れの場所”として、やりたいなと思いました。

新宿ロフト・樋口:新宿ロフト40周年アニバーサリーの『DREAM MATCH』を(現在の)Spotify O-EASTで開催したとき(2016年)も出てもらっていたり、節目でお世話にはなっているんですけどワンマンはこれまで、ないのだよね。

田中:(新宿ロフトが歌舞伎町に移転してから来年25周年を迎えるが)移転のニュースもテレビで見てて、“え! 移転するの? ここに出るつもりだったのに!”って思ったのもすごく覚えてますしね。それでデビューしてからパンクのイベントに出させてもらったのが最初かな…?

hozzy:もともとは青春パンク・バンドだったので、そのときスピーカーに頭突きしまくった記憶がありますね(笑)。ロフトは出させてもらうたびに毎回スゲー良い感じでライブができるなという印象で、ここにはライブの神様みたいなのがいて、“今日はお前を祝福してやるぜ!”っていう感じになってるのかな(一同笑)としか思えないぐらい、毎回良いライブができてる感じです。なぜなんでしょうね、いつかその理由を解明したいです(笑)。

田中:それとロフトはやっぱり、打ち上げまでが楽しい(笑)。もちろん、良いライブができた! って思うから打ち上げも楽しいんだろうなと思うんですけどね。GOING UNDER GROUNDとか、憧れの好きなバンドとも仲良くなれた場所だったりするし、個人的にも好きな場所ですね。

──ツアーファイナル、楽しみにしていますね!

hozzy:田中がセトリを考えてるんですけど、これまでのツアーで良かったところをさらにブラッシュアップして、攻め攻めでかまして来ると思うんですよね(笑)。

田中:新しいアルバムと昔の曲の親和性も高いと思っているので、新旧を織り交ぜてパンクな曲も入れながら。藍坊主っていろんな曲を書いてきて昔は聴いてたけど最近は聴いてないなっていう人とか、最近ライブに行ってないなっていう人にもすごく楽しんでもらえるライブにできると思ってます。1本のライブに対して全力で向き合ってやってきて、毎回濃いツアーになっていて終わった後“次はこうしよう”って楽屋で話してセトリも変えていて、藍坊主を更新し続けているようなツアーになっているんですよ。だから、今の藍坊主を全部ぶつけるファイナルにしたいと思ってます!

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