浦和への妥当な処分とは?/六川亨の日本サッカー見聞録

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JFA(日本サッカー協会)の内部事情に詳しい日刊スポーツによると、8月2日の天皇杯・名古屋戦でサポーターが暴徒化した浦和に対し、臨時の天皇杯実施委員会と理事会を9月上旬にも開いて処分を協議するそうだ。暴徒化したサポーターについては暴力相当の行為があったと認定し、60人ほどのサポーターに対して無期限の入場禁止や永久追放、管理責任を負う浦和にも来年度の天皇杯出場資格の剥奪などの厳しい処分が下される可能性があると報じていた。

事件が起きてから浦和は横浜FM、広島、名古屋とJ1リーグ3試合を消化。さらにACLプレーオフの理文(香港)戦も勝ち抜いて本戦出場を果たした。今週末には湘南戦があり、9月2日は新潟戦、そして9月6日からはルヴァンカップの準々決勝がスタートする。「厳しい処分」がいつ下されるのかわからないが、その間にも試合は粛々と進行している。この“スピード感”のなさに苛立ちを感じるのは、私だけではないだろう。

そして浦和は、8月5日に状況説明の記者会見後、16日に会見での説明を否定する事実経過をHPで発表し、違反者については『客観性、公平性、継続実現性の担保や法的根拠などを様々な角度から検証し、外部有識者の知見もお借りしながら新たな基準作りにスピード感をもって取り組んでまいる所存です。また、行為者への処分に加え、JFA様から弊クラブへの処分がおって通達されるものと理解しておりますが、そちらにつきましても厳粛に受け止め、再発防止への取り組みは勿論のこと、社内処分も含め誠実に対応していくほか、本事案の全容解明に向け、引き続きJFA様と積極的に連携してまいります』と報告した。

浦和に対する処分はJFAとJリーグ(天皇杯は両団体が主催)が下すため、浦和は裁定を待つしかない。しかしサポーターへの処罰はクラブ独自で出すことも可能なはずだ。再発防止策や社内処分もクラブ独自で出すことが、現在行われているリーグ戦やカップ戦を観戦に訪れるファン・サポーターへ安心を担保することにつながるだろう。

にもかかわらず“お上”の沙汰を待っている姿勢は、どこかの大学が違法薬物を部員が所持していて内部通報があったにも関わらず、積極的に調査しなかったネガティブな姿勢に通じるものを感じてしまう。だからこそ、浦和には自浄作用を期待せずにはいられない。

最後に浦和への処分だが、天皇杯での管理責任が問われるため、J2やJ3といった下部リーグへの降格や勝点の剥奪は論理的ではない。来年度の天皇杯の出場権剥奪は同一大会のため整合性があるように思われるが、そうなった場合に最も不利益を被るのは出場の機会を失う選手ということになる。

不祥事が選手(例えば八百長に加担したとか)やクラブスタッフ(他チームの選手を買収したとか)だったら、出場権の剥奪もやむを得ないだろう。しかし今回の不祥事はサポーターが起こしたことでもある。このため処分としては、来シーズンの天皇杯で、どの試合をホームゲーム扱いするかという問題はさておいて、一定試合数の無観客試合というのが妥当ではないだろうか。


【文・六川亨】

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