谷口建築 意匠そのまま 玉川図書館の改修

谷口建築の意匠を残して改修される玉川図書館=金沢市玉川町

  ●外壁補修、バリアフリー化

  ●金沢市教委、9月補正

 金沢市教委は、世界的建築家で文化功労者・日本芸術院会員の谷口吉生氏が父吉郎氏と手掛けた玉川図書館の改修に向けた基本計画を固めた。谷口建築の意匠を堅持し、時代の変化に合わせて施設の機能強化を図る。外壁などを補修して45年前の完成当時の状態を復元するほか、バリアフリー対応などを進める。

 9月補正予算案に7790万円を盛り込む。基本設計を簡素化し、来年度以降に行う予定だった実施設計を今年度内に前倒しする。着工、完成時期は未定。

 玉川図書館は吉郎、吉生両氏の最初で最後の親子による共作で、新築の本館を吉生氏、既存の赤れんがの建物改修を吉郎氏が設計し、1978(昭和53)年に完成した。本館はシンプルな意匠の外観で、外壁には年月を経ても錆(さび)が風合いを醸す鋼材が使われている。

 本館の改修は初めてで、計画では外壁や出入り口付近の歩道のコンクリートなど劣化・損傷した部分を補修する。正面出入り口の自動扉化、トイレの改修、敷地内に設置されている噴水の復元も行う。

 管理運営上の観点から閉鎖していた中庭の出入り口を開放する。郷土資料などをそろえた「参考資料室」は2階から1階に移し、本の貸出機能を1階に集約する。地下の書庫では可動式の本棚を増やして本を整理し、収納力を強化。照明器具のLED化も進める。

 市教委が吉生氏の協力を受け、谷口建築設計事務所と協議して改修内容を決めた。市は玉川図書館を金沢の建築文化の中心を担う現代建築物と位置付け、「レガシー(遺産)」として保存、継承する方針である。

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