灘高生の実力、世界に証明 国際物理・数学オリンピック2大会で「金」と「銅」獲得

国際物理五輪で金メダルを獲得した田中優希さん。今月末に開幕する国際情報五輪の日本代表にも選ばれている=灘高校

 今年7月、理系に秀でた世界各国の高校生らが難問で競う「国際物理オリンピック」と「国際数学オリンピック」の2大会が日本で開かれた。灘高校(神戸市東灘区)の3年生が日本代表として自国開催の大舞台に挑み、物理は田中優希さん(18)が金メダル(出場者の上位8%)、数学でも小出慶介さん(17)が銅メダルを獲得。大健闘で大会を終えた2人が、手応えや今後の目標を語った。(勝浦美香)

 物理五輪は、実験と理論の試験が2日間あり、それぞれ5時間かけて正解を求める長丁場。今年は実験問題にバネの振動と、光の複屈折にまつわる2問が、理論問題には天文物理分野の「中性子星」や、表面張力などに関する3問が出題された。

 日本代表は田中さんを含め5人。「特に理論が、1問の中でも幅広い分野の知識を問う複合的な問題だった。良問だなあと思った」とうれしそうに振り返る。

 普段の勉強では「興味を持った分野だけを熱心に勉強したいので、やらない時は本当にやらない」そう。ただ、五輪に向けて「苦手をつくらないことを心がけた」といい、「どの分野の問題にも対応できる状態にしていたことが良い結果につながった」と分析する。

 国際大会での活躍は灘中に入学した当初からの憧れだった田中さん。過去にも数学や情報などの国際五輪にもエントリー。昨年の情報五輪でも金メダルを獲得している。今月28日からハンガリーで開かれる情報五輪に出場予定で「物理との2冠を達成したい」と自信をにじませた。

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 20年ぶりに日本開催となった数学五輪には、日本から小出さんら6人が挑んだ。物理同様、試験は2日間あり、各日3問を4時間半の制限時間内に解く。今年は整数論や図形、代数などから出題され、特に6問目の図形問題が難問だったという。

 4時間半の試験時間は「問題を解いていると本当にすぐに終わる」と小出さん。「本来は解けるまでひたすら一つの問題と向き合うタイプ」というが、1日目の1問目が難問だったため2、3問目を解ききれず、2日目は作戦を変更。4、5問目を完答することができたものの、惜しくも銀メダルラインに届かなかった。

 「金メダルを狙っていたので正直悔しい」と小出さん。一方で「海外の選手らとの交流を通して教育を受けられる環境へのありがたさを感じた」とも話し、貴重な体験や悔しさを今後に生かす。

【国際物理オリンピックと国際数学オリンピック】メダルはいずれも上位半数が対象。上位8%(12分の1)が金、その次の17%(12分の2)が銀を、さらに次の25%(12分の3)の層が銅メダルとなる。東京で開催された物理(7月10~17日)には、約90カ国から450人が出場し、日本代表は5人中、田中さんら2人が金、3人が銀メダルだった。数学(同2~13日)は千葉県であり、約110の国や地域から約600人が挑戦し、日本代表は6人全員がメダルを獲得し、金二つ、銀三つ、小出さんの銅一つだった。

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