世界有数の収蔵数に 「生の芸術」アール・ブリュット、美術館に549点一挙寄贈

日本財団から寄贈された作品の一つ、八重樫道代さんの「チャグチャグ馬コ」

 国内の公立美術館で唯一、アール・ブリュット(生の芸術)をコレクションの柱に掲げる滋賀県立美術館(大津市)に、日本財団から作家43人の作品計549点が寄贈された。同館によると、アール・ブリュットの収蔵作品は国内最大級の計731点に上り、世界有数の質と量になるという。来年4月から企画展などで寄贈された作品や作家の魅力を発信していく。

 アール・ブリュットは、美術教育に影響されていない独自の創造性をもつ芸術で、障害者らの作品が見いだされている。

 財団が寄贈したのは、2010年にパリで開かれた日本のアール・ブリュット作品を紹介する大規模展に出展し、高く評価された作品が中心。ペンで多色に塗り分けた絵画や、紙とセロハンテープで角張った人形に仕立てた立体、無数の突起で覆われた陶作品など多彩だ。作家43人のうち、10人が出身や制作拠点で滋賀県にゆかりがあり、京都府の出身者もいるという。

 同館を選んだ理由は、運営が安定した公立で、専門の学芸員がいて、展示の実績もある点を挙げる。8月18日に県庁を訪れ、三日月大造知事に目録を手渡した日本財団の尾形武寿理事長は「財団では活用が難しく、引き受けてもらえる美術館を探していた。(寄贈作品は)できれば定期的に展示会をしてもらえればありがたい」と話した。三日月知事は「アール・ブリュットといえば滋賀県立美術館といわれるように大切に収蔵していく」と応じた。

 同館の保坂健二朗館長は取材に「どういう人がどういう思いで、どのように作っているのか想像してもらいたい」と展示方針を示し、作品を見てもらうだけでなく、制作風景などの紹介を通じて作家についても知ってもらう工夫をするとした。

県立美術館に寄贈するアール・ブリュット作品の目録を三日月知事に手渡す日本財団の尾形理事長(右)=県庁

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