“人魚のワイングラス” 生息を初確認 広島・江田島市沖 専門家「非常に貴重な発見」

広島県内の海では生息が確認されていなかった貴重な海藻をRCCのカメラがとらえました。「人魚のワイングラス」ともいわれているその海藻…。専門家も「貴重な発見」としています。

江田島市沖の海の中です。この日はたくさんの発見がありました。海に入ってすぐに出会ったのは、ユウレイクラゲ。大きさは40センチほどで、瀬戸内海で出会うことはほとんどありません。

クラゲの中には小さなイボダイが隠れています。イボダイには、ユウレイクラゲの毒が効かないそうで、外敵から身を守るために住みかにしています。

オニオコゼです。周囲の環境の色と同じものが多いのですが、こちらのオニオコゼは鮮やかなオレンジ色をしていました。黄変個体と呼ばれるもので、かなり珍しいそうです。

そして、今回の一番の発見は…

白山貴浩 カメラマン
「ちっちゃい。また、ちっちゃいな…」

「ホソエガサ」という海藻です。長さは3センチほどで、先にある緑色のカサの大きさは2ミリほどです。このカサの形から「人魚のワイングラス」と呼ばれています。

広島市植物公園 久保晴盛 さん
「瀬戸内海では産地が知られていなくて、生きているかどうかも怪しい。今回、見つかったのは非常に貴重な発見です。7月ごろになると棒状の枝、栄養枝を伸ばして、それが伸びた後にカップ状の構造をつくる。その中に緑色のツブツブがたくさんあるんですが、ふつうの植物でいう種子・胞子にあたる。それが成熟すると、先端からとんでいって、貝殻の上にとまって、来年の夏になると、そこから枝が伸びてというライフサイクルをしている」

ホソエガサの最大の特徴は、必ず貝殻の上にはえていることです。カサの形を保つために、貝殻に含まれる炭酸カルシウムが必要だからだといいます。

広島市植物公園 久保晴盛 さん
「日光がしっかり当たって波によってさらわれず、泥などに埋もれない、そういう穏やかな海底、なおかつ二枚貝(の貝殻)がたまるような局地的な環境がないと生きていけない特殊な生態をもつ海藻になります」

ホソエガサは、環境省のレッドデータブックで絶滅の一つ手前の「絶滅危惧I類」に分類されています。久保さんによりますと、県内では1936年と2014年に流れ着いたものなどが2件観察されているだけです。

ホソエガサの生息地が県内の水中で確認されたのは、今回が初めてだということです。

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― ホソエガサは1つの細胞でできた単細胞生物として生物の教科書にも出てきます。オーストラリアや熱帯の海などに生息しているようですが、日本が北限といわれています。海岸の埋め立てなどで貴重な生き物になっています。

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