東京での来場者が大幅増 高校生の原爆の絵に関心高まる 卒業後の制作作品も展示 記憶のバトンつなぐ場に

広島市立基町高校生が描いた「原爆の絵」パネル展が、ことしも東京都内で8月中旬に開催された。広島県神石高原町の市民団体が主催する企画展でことしが5回目だが、これまでになく来場者が多かった。第一回から準備や運営に携わる大越貴之さんによると7日間で937人。例年は400人程度だという。これには大越さんも驚いたようで、G7広島サミットの影響ではと推測する。「核兵器のない世界」の観点からは評価はさまざまなサミットだったが広島で開かれたインパクトはやはり大きいと言えよう。

基町高校の生徒が被爆者の証言を聴いて描く「原爆の絵」は2007年度に開始。夏になると多くのメディアに取り上げられ、いまやこの季節の定番ニュースのようになっている。高校生たちが被爆者と向き合い完成させた絵は見る者の胸に迫る。

主催する大越さんは広島に行けない人が「原爆の絵」を鑑賞できる機会を作りたいという思いから2019年に初めて銀座で開催した。広島と比べて原爆への関心が低い東京で展示することの意義も感じている。できれば原画を展示したいが搬送などの負担が大きいためパネルという形にしている。それでも大越さんは「絵を見れば当時がよみがえってくる。起きたことを学ぶスタートラインとして共有できる。それが平和を作っていくことにつながると思う」と手ごたえを感じている。

会場には、卒業後も平和をテーマに絵を描き続ける富田葵天(とみたそら)さんの作品が原画で展示されていた。

富田さんは原爆の絵の取り組みについて「証言者はやがていなくなる。それでも継承の一つの形として絵という手段があることに気づかせてもらった。」と会場で鑑賞者に語っていた。

「原爆の絵の活動を何らかの形で続けたいと思った」という富田さん。第一回から毎回、出品を続けている。

継続は力なり、をモットーに5回目の開催を果たした「原爆の絵」展。被爆体験を後世につないでいこうというバトンはしっかりと手渡されている。

銀座や有楽町といった国内で指折りの繁華街からの発信には大きな力がある。これからも定着し続けてほしいと思う。

(RCC中国放送東京支社 大平洋)

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