岐阜陸自発砲から2カ月 長崎県内は射撃場4カ所、市街地隣接も 住民ら「対策を」

商業施設などが並ぶ市街地のそばにある、陸自早岐射撃場。地元の江上地区自治協議会は、騒音を理由に10年以上前から移転を求めてきた=佐世保市有福町

 岐阜市の陸上自衛隊射撃場で、訓練中に隊員が小銃で撃たれ3人が死傷した事件から2カ月が過ぎた。陸自の射撃場を4カ所抱える長崎県にも衝撃が走った。佐世保市内には市街地に隣接する射撃場があり、一部の付近住民は不安を抱えている。陸自関係者からは「仲間(味方)を撃つような隊員はいないと思っていた」と動揺の声が漏れる。
 
 県内の射撃場は佐世保市に2カ所、大村と対馬の両市に1カ所ずつある。大村市の陸自大村駐屯地内にある射撃場は、岐阜市と同じ屋内射撃場。同駐屯地の隊員に加え、他部隊の隊員も訓練で使用。うつぶせになるなどして200メートル先の的を実弾で射撃する。
 陸自は岐阜で事件が起こった6月14日、全国の陸自施設で行っている射撃訓練や爆破訓練を一時中止。安全点検や安全教育を完了した部隊は再開を認めるとの通達を出した。

■移転条件の一つ
 このうち佐世保市にある「早岐射撃場」は、商業施設などが並ぶ市街地のそばにある、屋外の射撃場だ。地元の江上地区自治協議会は、騒音を理由に10年以上前から移転を求めてきた。同協議会は米海軍佐世保弾薬補給所(前畑弾薬庫)を針尾島弾薬集積所(針尾弾薬庫)へ移転・返還する計画に同意。射撃場の移転は、その条件の一つにもなっていた。
 栗山一彦会長(83)は「これまでは音だけが問題だったが、事件を機に不安が増した」と話す。陸自などから事件に関する説明はなく「『心配をかけています。対策をしています』のひと言でいいからほしかった」と本音を漏らす。陸自などの姿勢は「地元軽視だ」と憤る。
 事件では、逮捕された自衛官候補生が取り調べで「銃と弾薬を持って外に出たかった」と供述したとの報道もあった。栗山さんは「早岐は屋外で塀もない。外に出られたらどうなるか」と危機感を募らせた。自衛隊を巡っては組織内でのパワハラも相次いでおり「ハラスメントが新たな事件の引き金にならないか」と懸念も抱く。「移転が第一。それができないなら、屋内射撃場にして塀で囲うなど対策をしてほしい」と求める。

■隊員の心情把握
 「隊員はかなりショックを受けている。『仲間を撃つような隊員はいない』と思わなければ、自分の背中を預けられない」。陸自幹部は重い口を開いた。
 陸上幕僚監部によると、各部隊では隊員に対し、定期的(異動、昇任、配置換え、長期休暇の前後など)にメンタルヘルスチェックを実施。必要に応じて個別面談をしているという。陸自幹部は「信頼できる仲間をつくるために、一番大切なのは隊員の心情把握」と説明する。「人間のメンタルを100%把握するのは難しいだろうが、やっていくしかない」と言葉を絞り出した。

陸自大村駐屯地内にある射撃場。緑色の盛り上がった部分にうつぶせになるなどして200メートル先の的を実弾で射撃する=大村市西乾馬場町

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