パリ・パラリンピックまで1年 車いすバスケ・鳥海連志「二つ目のメダルが必須」 【インタビュー】

「日本が強豪と言われるために二つ目のメダルが必須」とパリ・パラリンピックの目標を語る鳥海=長崎市、長崎医療技術専門学校

 28日でパリ・パラリンピックの開幕まで1年となるのを前に、2021年東京大会の車いすバスケットボール男子で日本初の銀メダル獲得に大きく貢献した鳥海連志(神奈川ヴァンガーズ、長崎市出身)に意気込みを聞いた。東京に続いてパラの主役となりそうな24歳は「日本が強豪と言われるためにも二つ目のメダルが必須」と高い目標を掲げ、周囲を巻き込んで底上げを図っている。

-東京に続くメダルを獲得する手応えは。
 まだまだそのレベルに達していないチームだなと思いながら、最近は若手の成長も実感していて、代表合宿を重ねるたびにいい手応えも感じている。ここから継続的に強化できれば届かない目標ではない。

-早ければ、12月にタイで開かれるアジアオセアニアチャンピオンシップスでパリ切符を得られる可能性がある。
 特に車いすバスケは東京パラを境にたくさんの人が応援してくれるようになった。まずは出場権を取らないことには目指すメダルにも届かない。期待に応えられるように確実に獲得したい。

-17歳でリオ大会に初出場。東京大会で大会MVPに輝いた。自身3度目となるパリ大会の位置付けは。
 東京で銀メダル、昨年はU23世界選手権で優勝できた。この2大会を通して世界で勝つためにどんなスキルが必要なのか、筋が見えてきた。あとは僕がそれをチームに落とし込み、日本が強豪と呼ばれるような結果を出せるか。結果を出さないと説得力も生まれない。責任感を持ってやっているし、パリでの結果が僕自身の今後のバスケット人生にも大きく影響してくるはず。

-勝つためのスキルとは。
 例えばチームメンタリティーの視点。誰かエース級がいても、強いメンタルを持つ選手が1人いても、チームとしていい感触がないと負ける。そんな経験をたくさんしてきた。まず選手個々がチームにどう貢献できるのかを考えたり、その上で仲間の調子の良しあしを把握してプレーを選択したり、周りへの気配りがチームメンタリティーをつくっていく。戦術、戦略とは別のアプローチが僕の中にある。

-所属するクラブチーム「神奈川ヴァンガーズ」ではアシスタントコーチの肩書もある。
 代表に関わるメンバーがたくさんいるチームなので、代表がやっているバスケットをチームに落とし込み、チームでやっていることを代表にも持ち込めるというメリットがある。代表のやり方に、いかにヴァンガーズらしさを加えるか、という部分を僕が担当している。

-自分の成功だけでなく、周囲も巻き込んで日本全体のレベルアップを図ろうという意識が高い。
 僕自身の成長よりも、周りを優先するという感覚が50%。仲間の生かし方を考えることで僕自身の成長につながると実感しているのが、もう50%。そんなことを思いながら活動している。
 日本のトップチームはプロリーグがある欧州と比べても見劣りしていない。僕が海外に出て行くよりも、日本で仲間と一緒に成長していくことを重視したい。

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【略歴】ちょうかい・れんし 手脚に先天性の障害があり、3歳で両下肢を切断した。大崎中1年時に佐世保WBCで競技を始め、2015年度に日本代表入り。パラリンピックは16年リオデジャネイロ大会に17歳で初出場。21年東京大会はMVPの活躍で日本初の銀メダル獲得に貢献した。22年U23世界選手権で日本初Vをけん引。23年日本選手権は所属するパラ神奈川SC(現神奈川ヴァンガーズ)を優勝に導いた。長崎市出身、大崎高卒。24歳。

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