ホップ生産途絶えた青森県三戸町で復活に奮闘する地域おこし協力隊員 作付け2年目、収量1.6倍に

三戸町の畑で炎天下、2年目となったホップの収穫をする米澤さん

 ホップ栽培が一度途絶えた青森県三戸町で、新たに昨年から栽培に挑戦している町地域おこし協力隊員の米澤雅貴さん(38)=弘前市出身=が22、23の両日、昨年に続き2回目の収穫を行った。県内唯一のホップ農家、田子町の田沼義行さん(66)の助言を受け栽培したホップは16キロと、収量が昨年の1.6倍になるなど順調な伸び。大手ビールメーカーの契約栽培ではなく、地域特性を生かしたクラフトビール造りやホップの新たな販路開拓など、取り組みは従来とは異なった方向性を持ち、同町関係者も期待を寄せている。

 米澤さんは昨年、ビール特有の香りと苦みのもとになるつる性植物・ホップの毬花(まりばな)8キロを収穫、栽培に協力している総合香料メーカー「小川香料」(東京都)に香料試作の原料として提供したほか、残りのホップを使い、秋田県羽後町の醸造所「羽後麦酒」で瓶100本、5たる分の約100リットルのビールを造った。ホップの量が少ないため小麦を配合し、苦みの少ないウィートエールにしたが、今年はホップをふんだんに使い苦みが強く、ホップの香り高いIPA(インディア・ペールエール)にする予定。米澤さんはこれとは別に、三戸町産などのリンゴを使ったビール「ゴーゼ」も今年試作済み。また、ホップと並行して、蒸留酒「ジン」の香りや風味付けに用いる植物「ジュニパーベリー」の栽培も行っている。ジュニパーベリーの収穫にはまだ時間がかかるものの、将来的にクラフトビール、クラフトジンという2本柱の個性的なアルコール商品を生み出す予定だ。

 ホップ、ジュニパーベリーが香料として使えれば、その原料として販売が見込めるほか、独自ブランドのクラフトビール、ジン販売や、提供する飲食店展開も考えられ、雇用創出にもつながる。醸造設備をどうするかなど課題もあるが、これまでにない新たな取り組みに町議会も期待し昨年9月、ホップ畑を視察した。議会が特に評価したのは、香料需要を既につかんでいる点。参加した議員たちは「クラフトビール販売だけでは立ちゆかない可能性もある。その点、今回の取り組みは応援できる」とする。

 米澤さんは来年12月に町地域おこし協力隊員の任期を終える。「何も知らないところからホップ栽培、ビール造りを始めたが、こうした仕事に関わる三戸町への移住者が来やすい道筋を任期中につくりたい」と話す。松尾和彦町長は「将来的には町内への醸造所設置なども必要になると思う。さまざまな動きについて、町も引き続き応援したい」などと期待している。

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