客室数261、三沢市に青森県内最大級ホテル ルートインジャパンが計画 来年12月開業へ

ルートインGrand三沢が建設されるとみられる空き地=26日午後、三沢市幸町1丁目
満室を知らせるホテルトラストイン内の張り紙。三沢市内の宿泊施設では高稼働が続く=23日、三沢市中央町1丁目

 三沢市で青森県内最大級となるビジネスホテルの建設計画が浮上していることが26日、関係者への取材で分かった。出店するのはビジネスホテルを全国展開するルートインジャパン(東京)。市中心部に従来より高級業態となるホテルを建設し、客室数は261室、オープンは2024年12月が予定されている。工事が活況を迎えている日本原燃・六ケ所再処理工場(六ケ所村)の関係者などビジネス向けだけでなく、観光需要の取り込みも図る。

 同社の青森県出店は、08年に開業した青森市第二問屋町以来となる。立地場所は幸町1丁目の約2800平方メートルの空き地が想定される。前の所有者との売買契約は7月に成立し所有権が移った。

 名前は「ルートインGrand三沢」で、従来のルートインより一つ上位のブランドとなり、部屋の内装や設置品を充実させる。Grandの進出は青森県初という。県内市部のビジネスホテルの客室数は100~200が通常で、多くても200台前半。それより一回り大きい施設となる。

 同社広報は取材に出店計画は認めたものの、「詳細は答えられない」と回答。ただ、ある同社の関係者は「三沢市内は再処理工場関係の需要だけで埋まり、それ以外の人を受け入れられない宿泊施設不足が慢性化している。他の(観光などといった)需要受け入れのため、ホテル建設は必要」と話した。

 三沢市内の宿泊施設は再処理工場の関係者の宿泊が多く、高い稼働率で推移。一方で昨年の「10市(とし)大祭典」や今年の県民体育大会といった催しに対応しきれず、近隣の市に宿泊するケースが多かった。中心街の飲食店関係者からは、宿泊施設の建設に関する経済効果を期待する声が高まっていた。

▼「助かる」「競争激しく」歓迎と不安の声

 三沢市に大型ビジネスホテルが建設される計画が浮上していることを受け、日本原燃・六ケ所再処理工場(六ケ所村)の仕事に従事する人から歓迎の声が上がった。一方、地元の宿泊業者からは「競争が激しくなる。淘汰(とうた)されるところも出るだろう」といった不安の声も漏れた。

 「ホテル増は大助かり。泊まる場所の選択肢が広がる」。再処理工場関係の仕事をする都内メーカーの60代男性社員は胸をなで下ろす。

 月の半分を三沢市で過ごすが、ここ1年、宿泊予約がしにくい状況が続いている。「いつもキャンセル待ち。どれだけやきもきしたことか」。再処理工場完工目標まで「1年程度」とされるが、「完工目標の延期はこれまで20回以上。工事はまだまだ続くというのが共通認識」と語った。

 「勝負に出たな」。市中心部に15室を抱えるホテルトラストイン代表取締役の竹林大輔さん(49)は新規ホテルの建設をそう受け止めた。再処理工場関係の宿泊者で1年ほど先まで予約が埋まり「ホテルバブル」が続く。市中心部では別のビジネスホテル(100室程度)が開業予定で、ルートインと合わせれば来年末までに400室近く部屋数が増える計算となる。「市内では供給過多になる恐れもある」と警戒感をにじませた。

 ルートイン側は高級業態を取る理由を明らかにしていないが、市内のある宿泊業者は「作業員よりも技術者、管理職を対象に絞ったと思う。全国の視察団も率先して受け入れる形になるだろう」と既存の施設と差別化を図ると予想。日本航空による三沢-羽田空港(東京)便の4便維持などといったインフラ整備も影響していると述べた。

 市内の飲食店経営髙橋宏之さん(58)は「3年後は国民スポーツ大会も控える。市外に宿泊していた人を一人でも市内にとどまらせることができれば、経済効果は大きい」と話した。

 一方で市内では宿泊関係の人手が不足。どの施設も人繰りに苦労している。ある建設業者は、昨今の資材高が工事に影響を及ぼす可能性を指摘。「来年末までに間に合うだろうか」と話した。

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