「悲願のアレ」今季逃したら「当分ない」 阪神V戦士が語る岡田采配の妙、38年ぶり日本一も夢じゃない!

スタンドで盛り上がる阪神ファン=27日午後、東京ドーム(撮影・吉沢敬太)

 プロ野球セ・リーグで首位を快走する阪神タイガース。高校球児に甲子園球場(西宮市)を明け渡す恒例の長期遠征から約1カ月ぶりに本拠地に戻り、29日からはDeNAとの2連戦に臨む。18年ぶりの「アレ(優勝)」に向け、マジックナンバーを着々と減らし、いよいよ大詰めに。好調の要因や今後の展望について、いずれもデイリースポーツ評論家で投手として優勝を経験したOBの中田良弘さん(64)と井川慶さん(44)が、実体験を交えて語り合った。

 

中田良弘さんと井川慶さんが対談

 中田さんは1985年に主に先発で12勝を挙げ、日本一に貢献。井川さんは2003年に20勝で最優秀選手(MVP)に輝き、同年と05年に優勝へ導いた。2人は神戸市内のホテルで21日にあった神戸新聞情報文化懇話会で対談した。

 05年に優勝し、今季15年ぶりに指揮を執る岡田彰布監督は、98~02年に阪神で2軍コーチ・監督を務めた。当時若手だった井川さんは2軍の試合で制球が定まらず四球を連発した際、「次の回は全部変化球を投げてこい」と数少ない助言を受け、無失点に抑えた。自信を持つきっかけになり、その後の飛躍につなげた。

 期待の大砲、佐藤輝明(西宮市出身)には今季、今岡真訪1軍打撃コーチを通じて監督から指示を伝えているという。「直接話せばえこひいきしていると思われるからでは」と中田さん。ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で日本代表を世界一に導いた栗山英樹監督(当時)が常に選手に声をかける姿とは対照的で「割り切りが逆にいいのだろうか」と推測する。平田勝男ヘッドコーチの存在も大きく、監督と選手の間で「クッションの役割をしている」とみる。

 

近本、村上…投打に充実の戦力

 今季の打線について、俊足巧打の1番近本光司(淡路市出身)と2番中野拓夢が「相手投手に重圧をかけている」と中田さん。3、5番が固定できない中、全試合4番に座る大山悠輔をたたえ「柱が崩れなかったのが大きい」と言う。

 チーム防御率がリーグ唯一の2点台を誇る投手陣も評価する。今季台頭した村上頌樹(南あわじ市出身)はボールの軸が横にずれずに回転数も多いといい、中田さんは「天性的なものがある」と言う。

 井川さんは他の2人にも言及。現役ドラフトでソフトバンクから今季加入した左腕大竹耕太郎は「序盤は大胆に攻め、走者が出たらピンポイントに投げ、ギアの上げ下げがうまい」。才木浩人(神戸市西区出身)は「(高身長から投げ下ろす)角度があって落ちるフォークもあり、打ちづらい」とする。

 一方、扇の要として、72試合に出場した梅野隆太郎が13日に死球を受け、左手首の骨折で離脱。代わる捕手坂本誠志郎(養父市出身)について、中田さんは「ピッチャーからの信頼が結構厚いし、安定しているので大丈夫」とした。

 

日本シリーズはオリと関西対決か

 今後に向け、「気は抜けないが安心してください」と中田さん。岡田監督時代の08年、巨人に13ゲーム差を逆転され優勝を逃した苦い過去があるが、今季は2~4位の広島、DeNA、巨人が抜け出していない点が異なるという。

 今後の勝率は5割でいいとした上で、2人は「今年優勝できなかったら当分ない」との意見で一致。優勝決定日について、井川さんは9月23日に神宮球場であるヤクルト戦と予想した。

 その先の日本シリーズでは、パ・リーグ首位で優勝マジックが点灯したオリックスとの関西対決の実現、さらに38年ぶりの日本一に期待する。

 中田さんは岡田監督の采配を鍵に挙げ「選手起用がずばずば当たり、今年は違う」と話す。井川さんは「オリックスが相手なら、強いが阪神打線が打てそうな雰囲気もある。今年はチャンスなので、ぜひ頑張って」とエールを送った。 (井川朋宏) 【中田 良弘(なかだ・よしひろ)】1959年生まれ、横浜市出身。現役時代は右投げ右打ちの投手。横浜高から社会人の日産自動車を経て、80年のドラフト1位で阪神に入団した。81~85年に18連勝を記録。85年には先発ローテーションの一員として12勝5敗の好成績を収め、21年ぶりのリーグ優勝と球団初の日本一に貢献した。94年限りで引退。通算226試合33勝23敗14セーブ、防御率4.73。引退後、2009年には旧関西独立リーグ・神戸9(ナイン)クルーズの監督も務めた。 【井川 慶(いがわ・けい)】1979年生まれ、茨城県出身。現役時代は左投げ左打ちの投手。水戸商高から97年ドラフト2位で阪神入り。2002年から5年連続2桁勝利。03年は最多勝(20勝5敗)、最優秀防御率(2.80)、最優秀選手(MVP)、ベストナイン、沢村賞に輝いた。03年と05年にリーグ優勝。06年オフにポスティングシステムで米大リーグのヤンキースへ。オリックスに移籍後、15年限りで退団した。NPB(日本野球機構)通算219試合93勝72敗1セーブ、防御率3.21。17年には独立リーグのBFL兵庫でプレーした。

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