アナログの強み

 「ネットよりも新聞で読んだ方が忘れにくいような気がする」。愛媛県で開かれたNIE(教育に新聞を)の全国大会分科会で、最近新聞を読み始めたという中学生の感想が耳に残った▲個人的にもネットで読んだ情報は記憶に残りにくいと感じていたが、ネットに親しんでいる若い人でも同じなのか。ICT(情報通信技術)をテーマにした大会だったので、なおさら強く感じた▲実際、アナログな手法がデジタルより記憶に残ったとの研究結果もある。東京大などの研究グループは、スケジュールなどを書き留める際、手帳と電子機器では、手帳に手書きした方が忘れにくいと指摘した。メモした位置なども記憶に影響するらしい▲昭和大の研究チームは、紙の本で小説を読んだ時の方が、スマホで電子書籍を読んだ時よりも読解力が高くなるとの研究成果を発表した。それはスマホに読解力を低める何かがあることを示唆する▲かと言って、今更スマホがない不便な生活には戻れない。多様な教育を届けられるICTは、離島などには不可欠だ▲子どもが学校で1人1台タブレットを持つ時代。ICT活用はさらに進むはずだ。そんな中でも紙の読書や手書きなどアナログ的手法の中にある良さを見つけ出し、その強みを取り入れる工夫を模索してほしい。(屋)

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