宝塚星組、異例ずくめの「1789」終幕 トップ礼真琴や関係者の体調不良、第2幕が上がらず休演など乗り越え

宝塚大劇場=宝塚市栄町1

 宝塚歌劇星組公演「1789-バスティーユの恋人たち-」が27日、東京宝塚劇場で大千秋楽を迎えた。ファン待望の海外ミュージカル大作だったが、宝塚大劇場での公演はほぼ半分が中止に。東京ではトップ礼真琴(れい・まこと)が体調不良により休演、急きょ代役を立てて公演を続けるなど、アクシデントが後を絶たず、作品本来の魅力だけでなく、いろいろな意味で注目を集めた異例ずくめの作品となった。

■強い思い入れ

 日本では2015年に月組が初演したフレンチミュージカル。礼は常々「月組公演を見て衝撃を受け、ずっと出演したいと思っていた」と語っており、この作品に強い思い入れがあった。また今公演を最後に、礼と同じ95期の瀬央(せお)ゆりあが専科に異動、同組の歌姫有沙瞳(ありさ・ひとみ)が退団。屋台骨として星組を支えてきたメンバーとの最後の作品ということもあり、公演にかける思いはひとしおだった。

■休養発表

 最初の衝撃は開幕前、礼が「1789」の東京宝塚劇場公演終了後から約2カ月の休養に入ることを発表したことだった。理由は名言しなかったが、ファンの間ではトップスターの過密スケジュールを心配する声が上がっていた。

 異変は宝塚大劇場での舞台初日(6月2日)を迎える前から起きた。通常、開幕前日に行われる通し舞台稽古が、急きょ、開幕当日に。加えて初日の開演時間も午後1時から同3時半に変更された。

 初日を終えて無事に幕が上がったと思ったのもつかの間、複数の関係者に体調不良が判明し、翌3日からの公演中止が当日の朝に発表された。最終的に宝塚大劇場では18日午前11時開演の回までと新人公演も含め、全45公演中の半数超にあたる25公演が中止となった。

 満を持して7月22日から始まった東京宝塚劇場公演では、8月15日、異例中の異例の出来事が起こった。第2幕が上がらず、そのまま休演。19日から公演は再開されたものの、礼が体調不良を理由に不在。トップに代役を立てるという、前代未聞の事態となった。

■経験を糧に

 24日に礼が復帰するまでの4日間8公演で主役を務めたのがこのところ成長著しい暁千星(あかつき・ちせい)。最後の大階段ではトップの代名詞である大羽根も背負った。暁のほか3人が本来とは異なる役を演じたが、準備期間がほとんどなかったことをつゆほども感じさせず、舞台を立派に務め上げた。

 迎えた27日の大千秋楽。本番で礼は体調不良を感じさせない力強い演技と歌声を披露。代役を務めた面々も、その経験を糧に、一層実力を増し、輝く姿を観客に見せつけた。

 カーテンコールで礼は「本来は観客に幸せになって帰ってもらうべきものなのに、多大な心配と迷惑をかけてしまい申し訳ない。主演として情けない」と声を詰まらせた。「再び星組生全員で舞台に立った時、観客に1ミリの心配も抱かせない星組をつくっていきたい」と力を込めた。

 また一部週刊誌による礼の体調についての報道を念頭に、「生まれてから今日まで、一度たりともポリープができたことはありません」と笑顔で語り、ファンの不安払拭に心を砕いていた。

 トップスターにのしかかる重圧がどれほどのものか、期せずして目の当たりにすることとなった今回の「1789」。星組が次に挑むのは、あの大ヒットインド映画を題材にした「RRR」だ。休養期間を終え、元気に戻ってきた礼率いる新生・星組に期待したい。(小尾絵生)

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