祖父が亡くなり20歳で帰郷、農作物生産の会社経営者に やりがい感じる時とは

稲の生育状態を確かめる太田さん(与謝野町石川)

 太田桂史さん(33)は京都府与謝野町の40ヘクタールの田んぼで米を生産し、10ヘクタールの畑で野菜栽培も手がける会社を経営。農作物の栽培や収穫で現場にも出向く。「生育状況を自ら確認することが品質向上に欠かせない」と汗を拭った。

 米農家の3代目。地元の高校を卒業後、滋賀県立農業大学校(近江八幡市)に進学。卒業間際に祖父が亡くなり、父を手伝うため、20歳で帰郷した。

 農作業の基本知識は大学校で学んだが、当初は父から苗を植え、肥料を与え、収穫するタイミングを教えてもらう毎日だった。自然が相手だけに「去年と同じ作業を進めても、うまくいかない」。経験を重ね、肥料のタイミングなどを判断できるようになった。

 人員確保や農機具の購入など効率的に農地を維持するため、地元農家の成毛一生さん(42)と2020年2月に株式会社「AGRIST」を設立し、代表に就いた。有機JAS認証を受けた「こしひかり」など6品種9種類の米を栽培し、400軒の個人宅へ届けるほか、JAへの出荷や卸売りも行う。大学校の後輩で、淡路島でタマネギ栽培をしていた瀬川魁人さん(31)を招き、キャベツなど野菜づくりも始めた。

 できるだけ農薬を使わない栽培にこだわるが、害虫対策でお酢をまいたり、虫にやられて変色した米を選別したりする機械を導入するなど苦労も多い。販売時には店頭にも立つ。「この野菜は去年のほうがうまかった」など消費者の声を聞き、栽培法を考える努力も重ねる。米を届けたり、店頭に立ったりした時に「今年はおいしいね」と喜んでもらえるとやりがいを感じる。

 地元の子どもたちに田植えやジャガイモの収穫を体験してもらう機会も大切にする。「食べ物をつくる喜びを感じ、農業に関心を持ってもらえたら」と願う。

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