近江神宮(大津市神宮町)の新しい宮司に網谷道弘さん(71)が7月から就任した。同神宮で宮司の交代は35年ぶりとなる。
最初から神職を目指していた訳ではない。教養を深めようと神道や仏教、キリスト教の本を読んだことはあるが、宗教家になるつもりはなく、大学卒業後は企業に就職した。
きっかけは結婚時に訪れた。仲人になってくれた当時の明治神宮(東京都)の宮司から「君みたいな人が神主になるといいんだよね」と言われた。自分のどこを見てその発言をしたのかは分からなかったが、この一言がずっと胸に引っかかっていたという。
仕事は順調だったが、自らの立場に違和感があった。「利潤追求だけではなく、何か自分のやるべきことがあるのではないかという思いがあった」と振り返る。結婚から4年ほどして神職として歩むことを決めた。
国学院大で学んだ後に明治神宮へ入り、最後は宮司を補佐する権宮司を務めた。70歳で定年を迎え、近江神宮の前宮司から誘われて湖国に来た。
「行事の多いお宮で、地域と密着していると実感した」。この2カ月間での感想だ。近江神宮は「かるたの聖地」として知られる。「日本の伝統文化が若い人たちに浸透しているのは素晴らしいこと」と話す。
近江神宮は県民の熱意で1940(昭和15)年に創建された歴史を持つ。そのため、祭神である天智天皇のことをもっと知ってもらいたいと願う。また、地域に貢献したいという思いも強く、災害時には敷地内にある近江勧学館を避難所として地域に開放することなどを考えている。
「参拝者が気持ち良くお参りできるように努力していきたい。地域に根ざした神社でありたい」と決意を語る。