「富士山が爆発することを祈ります」処理水放出で中国から相次ぐ“迷惑電話”に困惑 漁業関係者も不安

東京電力福島第一原発の処理水を海に放出した影響が静岡県内にもおよんでいます。行政機関などには中国からとみられる迷惑電話が相次ぎ、漁業関係者の間には中国による海産物の輸入停止によって、不安が広がっています。

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<25日の電話の音声>
「富士市役所でございます」
「あなたのお母さんの…日本はどうして核排水を排出しないか」
「あなたたちの富士山が早く爆発することを祈ります」

これは8月25日、静岡県富士市役所の代表番号にかかってきた中国からの迷惑電話とみられる音声です。

福島第一原発で処理水の海洋放出が始まってから、福島県などを中心に中国からとみられる迷惑電話が各地で相次いで確認されています。

<富士市シティプロモーション課 天野秀訓主幹>
「富士市や静岡県が処理水に関係しているわけではないので、なぜだろうというのが正直なところでした」

県内では、県庁や函南町役場のほか、ホテルなどにも中国からとみられる迷惑電話が確認されています。

さらに深刻な影響を受けているのは、中国とビジネスを続けてきた海産物の業者です。

<海伸 福井裕馬営業課長>
「ここがマイナス60℃。この辺がバチマグロ、ほかにもいろいろあります。マイナス60℃で管理しています」

焼津港などで水揚げされたマグロを加工、販売する焼津市の海伸は、加工したマグロの1割程度を中国に輸出していました。

<海伸 福井裕馬営業課長>
「中国の輸出に関しては本マグロ。なかでも、脂ののった大トロの部分が一番の需要」

中国は福島第一原発で処理水を海洋放出したことに反発。日本からの水産物の輸入を全面的に停止したため、海伸も取引がストップしています。

<海伸 福井裕馬営業課長>
「不安で、日々、考えていかなければいけないのかなと。具体的な答えは出ていない。全体の売り上げを考えると、そこまでは大きくはないが、なくなった1割をどのようにやっていくのかが課題になる」

中国への輸出がストップすることで懸念されるのが、国内市場への影響です。

熱海市伊豆山でイセエビやサザエなどを獲る漁師の松本早人さんは、中国向けの商品が国内で流通することで値崩れを起こすのではないかと懸念しています。

<漁師 松本早人さん>
「静岡県の水産物の値段が下がったりとか、そういった影響が懸念しているような感じですね」

海洋学の専門家は、処理水の放出による人体への影響はないとしたうえで、水産業における販路の見直しをするタイミングだと話します。

<東海大学海洋学部 山田吉彦教授>
「中国の輸入禁止措置を受けて、国内でしっかりと消費体制を整えていく。国内の魚を安心だという認識のもとに消費体制を整えていくということは、いま、未来に対する国内の水産業の新たな展開に、そのきっかけづくりになっている。しなければいけない」

処理水の海洋放出は今後30年程度は続く見通しで、中国との関係をどうしていくかという課題が突き付けられています。

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