「子どもに怒りを覚えても暴力は許されない」長男に向けてエアガンで…傷害罪に問われた父親に有罪判決

去年、広島市の自宅で長男に向けてエアガンを発射し、けがをさせたとされる父親の裁判で、広島地方裁判所は29日、執行猶予付の有罪判決を言い渡しました。

判決によりますと、父親は去年1月、広島市南区の自宅で当時10歳の長男の体にエアガンを向けてBB弾を発射し、口の回りに命中させて打撲のけがをさせました。

これまでの裁判で、父親はエアガンの入手先について「会社の付き合いでサバイバルゲームをしていて入手した」と明かし、長男のいる方向に撃ったものの「長男にはあたっていない」と説明していました。さらに、長男にエアガンを撃った理由について、子育てに悩んでいたことを明かしたうえで、「言うことを聞かなかったので手元にあったエアガンで威嚇した」などと話しました。

検察側は、医師の証言などから「長男の口元の傷はエアガンの弾が当たったとして矛盾はしない」として、懲役1年6か月を求刑していました。

一方弁護側は、「事件翌日に児相の職員に対して『あまり痛くなかった』『ゴミが当たったかと思った』と言っている」と主張していました。

そして迎えた29日の判決・・。父親は、半袖のワイシャツに黒のズボン姿で出廷しました。

「エアガンで撃たれた。痛くて涙が出た」と長男は担任に… 裁判所の判断は

広島地裁の櫻井真理子裁判官は、事件翌日に長男が口元の傷について「エアガンで撃たれた。痛くて涙が出た」などと学校の担任に話していると指摘。さらに、傷の状況から、「エアガンの発砲以外の原因によってけがをした具体的な可能性は一切うかがわれない」とし「父親が手に持ったエアガンの銃口を長男に向け、発射されたBB弾が命中してけがをさせた」と結論づけました。

そのうえで、「約3メートルという近い距離から相当威力のあるBB弾を発射し、目に当たれば被害者は失明する恐れもあった危険なもの。子どもの行動に怒りを覚えることがあっても暴力を用いることは決して許されない」と述べました。

一方で、「短絡的な暴力行為を反省し、今後の姿勢を改めると述べている」として懲役10か月、執行猶予3年の判決を言い渡しました。

最後に櫻井裁判官は、「今後はこのような暴力のない、穏やかな家庭を築いてください」と述べ、裁判は閉廷しました。

広島地裁は被害者の長男の特定を防ぐためとして、父親の名前を明らかにせず、裁判は匿名で進められました。

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