吉永小百合の主演映画「こんにちは、母さん」 人情や絆の大切さ丁寧に描く 【大分県】

一人で前向きに生きていこうとする母親を演じた吉永小百合=福岡市
「こんにちは、母さん」の一場面(ⓒ2023 「こんにちは、母さん」製作委員会)

 山田洋次監督の90本目の映画「こんにちは、母さん」が9月1日から、大分市のT・ジョイパークプレイス大分、TOHOシネマズ2館、中津市のセントラルシネマ三光で上映される。

 「母べえ」(2008年)、「母と暮せば」(15年)に続く「母」3部作の最後。いずれも吉永小百合が主役を務めた。

 息子役は“山田組”初参加となる大泉洋、孫役は「キネマの神様」に続いての永野芽郁。その他、寺尾聡、宮藤官九郎、田中泯ら個性豊かな俳優陣が顔をそろえた。

 原作は2001年に初演された劇作家、永井愛の同名戯曲。07年にはドラマ化もされた。山田監督は下町の人情や絆の大切さを丁寧に描き、新しい出発をする親子、家族の物語を紡いだ。

■「年を重ねても力強く生きていきたい」

 長く日本映画界をリードし、123本目の映画出演となった吉永小百合が8月19日、福岡市内であった記者会見で本作への思いを語った。

 ―「母と暮せば」以来、8年ぶりの“山田組”となった。

 「監督の新しい映画をつくるんだという思いを感じました。今までは短いカットをつないでいくという撮り方が多かったのですが、カメラをロングに構えて長回しするところもありました。ヒロインもこれまでの2作は、どちらかというと耐える女性だったが、今回は夫に先立たれても一人で地域の人と生きていこうという力の強い母さん。とてもすてきで私自身も年を重ねてもそういうふうに生きていきたいと思いました」

 ―演じる上で苦労は。

 「戯曲の映画化なので、長いせりふをしっかり自分の中でこなして映画でしゃべるのが難しかった。家で一人で練習するのが大変でした」

 ―大泉洋さんとは初共演。

 「お目にかかったこともなくて心配もあったんですが、始まったら軽やかに母さんに懐いて、しっかりと支えてくださり、やっていて面白かった。とにかくおしゃべりが好きで現場でも記者さんのようにたくさんの質問をされ、つい普段しゃべらないプライベートのことまでしゃべってしまいました」

 ―どんなところを見てほしい。

 「家族同士のつながりも希薄になり、孤独で大変な思いをしてらっしゃる方も多いでしょう。そんな中でも、手をつなぎ生きていくことの大切さを少しでも感じ取っていただけたらと思います」

 【ストーリー】大手企業の人事部長として日々、神経をすり減らしている神崎昭夫(大泉洋)は、家庭でも妻との離婚問題、大学生の娘・舞(永野芽郁)との関係に悩んでいる。ある日、久しぶりに母・福江(吉永小百合)が暮らす東京下町の実家を訪れる。そこには、つややかなファッションに身を包み、生き生きと生活する母がいた。しかも恋愛をしているという。

 戸惑う昭夫だったが、おせっかいで温かい、下町の人との再会、以前と変わった母の姿から、見失っていたものがあることに気づく。

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