プレーオフ争いが佳境に入り、最も白熱した競争と言えるのがア・リーグ西地区の地区優勝争いだろう。
前半戦から首位を走ってきたレンジャーズ、後半戦に入ってから勢いが止まらないマリナーズ、そして6年連続でプレーオフに進出中のアストロズ。これら3チームが1ゲーム差の中にひしめき合い、首位を争っている。
初めはスロースタートながら徐々に調子を上げてきたアストロズ、後半戦は30勝12敗と無双状態のマリナーズと比べると、前半戦から首位を維持していたレンジャーズの調子は鈍ってきていると言わざるを得ない。
特に過去2週間でメジャーワースト2位のセーブ失敗6を記録したブルペンの乱調が足を引っ張っている。
現地21日のダイヤモンドバックス戦はまさにその懸念が露呈。クローザー、チャップマンのセーブ失敗が仇となり、延長戦の末、シーズン最長の5連敗を喫してしまったのだ。
試合後「この責任は私にある」と発言したのはセーブ失敗したチャップマンでも、10イニング無得点に終わった野手陣でもなく、監督のブルース・ボウチーだった。
ボウチー監督は現在68歳。通算4000試合以上の采配を振るい、3回の世界一を達成した正真正銘の名将だ。エンゼルスのネビン監督は現役時代にボウチー監督の下でプレーしていたくらい、そのキャリアは長い。
2019年に栄華を極めたジャイアンツでの監督生活にピリオドを打ち、ボウチーは第一線を退いて史上屈指の名将として殿堂入りを待つだけに思えた。
しかしボウチー監督は「競争が恋しかった。勝利の興奮が恋しかった。敗北に伴う痛みもある。それすらも恋しかった」と球界に戻ってきた。彼を隠遁生活から引っ張り出したのは、現役時代にボウチー監督の下でプレーしたGMのクリス・ヤングだった。
チームは失速中だが、百戦錬磨のボウチー監督は動じていない。
「選手たちは大きなプレッシャーの中でプレーしている。彼らにはこれを堪能して、楽しんで、願わくは最後には狂ったように寄ってたかって勝利を祝ってほしい」
近年はシーズン終盤、プレーオフになると勝負強さを欠くことの多いレンジャーズだが、ボウチー監督が率いる今年は一味違うかもしれない。