社説:BRICS拡大 懸念される世界の分断

 中国、ロシア、インド、ブラジル、南アフリカの新興5カ国(BRICS)首脳会議が加盟国拡大を決めた。中東などの6カ国が来年1月に正式加入し、新興国や途上国との連携を進める。

 先進7カ国(G7)など欧米主導の国際秩序に不満を持つ国々がBRICS拡大に応じ、米欧との溝を深める懸念を拭えない。

 BRICSは2001年、急速な経済成長が期待できる中国など4カ国が英語の頭文字から呼ばれ始め、09年から毎年首脳会議を開催し、11年に南アが加わった。

 若年層の労働力や天然資源が豊富な上、5カ国だけでも世界人口の4割、世界の国内総生産(GDP)の4分の1を占める経済交流の枠組みとして、国際社会に影響を強めつつある。

 6カ国は、サウジアラビアやイラン、エジプト、アラブ首長国連邦(UAE)、エチオピア、アルゼンチンで、新規加盟は南ア以来となる。

 加盟国拡大でさらに存在感は増し、今後「グローバルサウス」と呼ばれる新興・途上国の利益を代表する一大勢力へと発展する可能性が大きい。

 拡大は中国が主導した。10年の節目を迎えた中国の巨大経済圏構想「一帯一路」は、イタリアが離脱を検討するなど陰りが出始めており、勢力の再編強化が狙いだろう。ウクライナ侵攻を巡って米欧と激しく対立するロシアと共に、新興・途上国を束ねて対抗軸にしたいとの思惑が透ける。

 ただ、インドやブラジルは、政治色が強まって反欧米色が濃くなるのを警戒しているとみられる。新加盟国の国際社会での立ち位置も異なり、11カ国体制となるBRICSの将来展望は不透明だ。

 どのような方向性を示し、国際的な影響力を強めていくのか、目が離せない。

 BRICSへの新規加盟に40カ国ほどが興味を示し、そのうちの約20カ国が加盟希望を正式に伝えたという。今回の6カ国の加盟は第1段階とされ、さらなる拡大も視野に入っているようだ。

 多くの国が熱視線を送るのは、気候変動や食料価格高騰といった難題に有効な処方箋を示せない先進国への不満の表れと言えよう。

 各国が協調を図るのは悪いことではない。だが、国際社会の分断を招くべきではない。

 日本や欧米は新興・途上国の実情に真摯(しんし)に向き合い、できる限りのニーズをすくい取る姿勢を求められている。

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