戦後78年、「寄せ書き日の丸」が神戸・長田に帰郷 持ち主の候補は戦没兵士45人、米国のNPOが返還

「キセキ遺留品返還プロジェクト」のスタッフ(右から2人目)から、日の丸を手渡された北井和夫会長(同3人目)=神戸市長田区西尻池町2

 「神戸市西尻池」などと墨書された戦時の「寄せ書き日の丸」の返還式が29日、神戸市長田区西尻池町2の西尻池財産区会館で行われた。米国のNPO法人「キセキ遺留品返還プロジェクト」(ジャガード千津子代表)のスタッフから住民に旗が手渡され、戦後78年を経て帰郷を果たした。

 この日の丸は、戦時遺留品の返還に取り組んでいるキセキの前代表が1992年、米国のミリタリーショーで購入、保存していた。

 キセキは、西日本新聞(福岡市)「あなたの特命取材班」に調査協力を依頼。同社と提携する神戸新聞が双方向型報道「スクープラボ」の取り組みとして旗の来歴を調べた。

 兵庫県遺族会などの協力で周辺地域の戦没者を調査し、持ち主である可能性が高いフィリピンなどで戦没した45人を特定。西尻池の地元住民でつくる「西尻池財産区管理会」に経緯を伝えたところ、返還を受け入れた。

 29日の返還式には住民ら10人が参加し、米国から届いた旗を受け取った。同管理会の北井和夫会長(83)は「これを機に過去の戦争の悲しさ、苦しさを後世に伝えたい。われわれの命のある限り、この平和の大切さを伝えていきたい」と話した。(杉山雅崇、西日本新聞・黒田加那)

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