がん2度克服、ビーズ作家に 「悔いなく生きる」野々市の34歳土田さん

代表作としてレモンのブローチを発売する土田さん=白山市七郎町

  ●9月1日から作品発表

 2度のがん摘出手術を乗り越えた野々市市の男性が、アイロンビーズの作家として歩みを始める。思うように体が動かなかった療養中に触れた手工芸の世界に魅了され、9月1日から作品を発信する予定だ。男性は「がん経験者でも生き生きと活動できると知ってもらい、同じような境遇の人に少しでも希望を持ってほしい」と意欲を新たにしている。

 男性は野々市市三納3丁目の会社員土田龍之介さん(34)。2014年に左の精巣にがんが見つかり、睾丸(こうがん)を摘出。16年には右の精巣にもがんがあることが分かり、摘出手術を受けた。再発は見られないが、今も投薬治療を続けている。

 退院後に体力が落ちて、家にいることが増えたという土田さん。妻菜(なの)さん(34)の勧めで革細工、木工などを始めると、20年からはアイロンビーズを中心に創作しているという。

 アイロンビーズは、小さな筒状のカラフルなビーズを並べて図柄を作り、アイロンの熱で溶かして完成させる。土田さんは現在、ブロッコリーの栽培などを手掛ける農業法人安井ファーム(白山市七郎町)で出荷や選別作業を手伝い、広報の仕事もしながら、果樹、花をテーマにアイロンビーズ作りに取り組んでいる。

 徐々に体調が戻ってきたことから、アイロンビーズを通じて世の中を元気にしたいと、9月1日に「ドット・クラフト・ファーム」のブランド名で作品を発信することにした。

 祖母の邦子さん(85)が水墨画を描く際に使っていた名前をもらい「土田青邦(せいほう)」として活動し、疲れた時に食べると元気になれるというレモンをテーマにしたブローチを代表作品としてネット販売する計画。価格は1個800円(税込み)。

 売り上げの一部を国立がん研究センター(東京)に寄付するという土田さんは「人生は1度きり。悔いのないように生きたい」と作品づくりに精を出している。

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