南米開催断念でシリーズはイタリアに回帰。第7-8戦はサルディニア島連戦に/エクストリームE

 今季2023年より完全ダブルヘッダーの年間スケジュールが組まれるワンメイク電動オフロード選手権、エクストリームEだが、当初より北米大陸ならアメリカ合衆国で、南米大陸ならブラジルのアマゾン地域を想定して9月16~17日のスロットが組まれていた第7-8戦は、イベント計画が終盤になって頓挫したことを受け急きょ開催地を変更。前戦の開催地でもあったイタリアはサルディニア島へ回帰することが発表された。

 その7月8~9日の週末には、元F1王者ニコ・ロズベルグ率いるシリーズ初代王者ロズベルグXレーシング(RXR)が復調を見せ、ヨハン・クリストファーソンとミカエラ-アーリン・コチュリンスキーのペアが週末完全制覇を達成していたが、そのサルディニアがふたたび第7-8戦の舞台になることが決まった。

 本来、初開催のアメリカか、南米ブラジルのアマゾンを開催地として希望していたシリーズ側だが、関係者によれば地元資金の問題で直近には開催候補地そのものが変更され、アルゼンチンでの候補地探しが終盤に差し掛かっていたという。しかしそれも国内の地方選挙が動向を不透明にし、ここへ来てサルディニア島のテウラーダ岬に位置する“ピサーノ・バラック(イタリア陸軍兵舎)”に機材を戻す選択肢が浮上した。

 すでにこの地は2021年創設のシリーズでは例年開催されるおなじみの会場となっており、イタリア自動車クラブ(ACI)、サルディニア州、イタリア軍と協力してイベントが開催されてきた。

 また、同シリーズ自体が気候危機への意識を高めることを目的に掲げており、南ヨーロッパ全域における熱波の影響でこの夏の間も多くの課題に直面している同地は、地中海中部の平均気温で記録的な最高値に達しており、サルディニアでも7月中旬に最高気温46度を記録していた。

 当時の世界気象機関は、ヨーロッパの熱波はさらに1カ月以上続く可能性があると警告しており、かつて島に甚大な被害をもたらした山火事は、今季ヨーロッパのみならず多くの国に蔓延する状況となっている。

第7-8戦では、復調なった王者Rosberg X Racing(RXR)がダブルヘッダー完全制覇を成し遂げた
独自の環境研究機関を抱えるシリーズも、気候変動の調査結果などを随時報告、公表している

■北米だけでなく南米の他の地域でもレースを開催したいという野心は変わらない

「我々がサルディニアでレースをするのに不可欠な存在であるイタリア自動車クラブとイタリア軍、そして同州の支援に敬意を評しなければならない。彼らはとても親密なパートナーであり、また戻ってくる機会を非常に柔軟に許可してくれた」と語るのは、エクストリームE創設者兼CEOを務める、おなじみアレハンドロ・アガグ。

「さらに大陸全体で経験されている異常な暑さと気象パターンによって、ヨーロッパ全土で何が起こっているかを考えると、語るべき重要な気候の話もある」と続けたアガグだが、将来的には同じ問題を北半球と南半球で抱える両アメリカ大陸での開催にも意欲を見せる。

「グローバルな(FIAインターナショナル)選手権として、将来的には北米だけでなく南米の他の地域でもレースを開催したいという野心は変わらない。そこにはモータースポーツへの情熱があるからね」と続けたアガグ。

「さらに昨季2022年に大成功を収めたイベントであるチリへの帰還は引き続き進行中で、今季“シーズン3”のフィナーレとして12月に開催する計画だ」

 同じくシリーズのチーフチャンピオンシップオフィサーであるジェームス・テイラーは、同国陸軍訓練施設の広大でオープンなロケーションにより、同じ開催地ながらまったく新しいトラックを考案することも可能だと明かす。

「シリーズは長年にわたってこの地域と強い関係を築いてきた。彼らはつねに我々を信じられないほどのサポートをしてくれ、こうしてふたたびこの島でレースをすることを可能にしてくれた」と感謝の意を述べたテイラー。

「チャンピオンシップは重要な段階に達しており、サルディニアはつねにコース上で成果を上げてきた。その詳細は数週間以内に発表する予定だが、私自身も9月に開催される最新の“X Prix”を楽しみにしているよ」

開催地の環境回復を狙う”レガシィ・プログラム”だが、前回サルディニアはミツバチの生態調査と個体数回復のサポートを実施していた
前戦でシリーズデビューを飾ったリア・ブロックは、ふたたび同じ会場で2戦目を迎えることになる

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