「大火災旋風ができて、何万人もの人が亡くなった」関東大震災で多くの死者を出した「火災旋風の脅威」実験で再現【わたしの防災】

10万人以上が犠牲となった「関東大震災」は9月1日で100年を迎えます。「火災旋風」と呼ばれる「炎の竜巻」が街を襲い、被害が拡大しました。100年経った今も変わらないという「火災旋風」の脅威を今回、実験で再現しました。

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100年前の9月1日、東京などに大規模な火災をもたらした関東大震災。死者・行方不明者は10万5000人でその9割が火災によるものでした。木造住宅が密集する地域で巨大な炎が渦を巻く「火災旋風」が発生し、甚大な被害を及ぼしました。

炎の竜巻「火災旋風」はどのような状況で起きるのか。木造住宅の密集地域と避難場所となる広場を再現し、燃料を入れて火をつけます。

<実験を監修した関本孝三技術士>
「当時は木造の住宅が密集していて、空いている所が広場になっていた。ここに大火災旋風ができて、何万人もの人が亡くなった。その現場を実験で再現しようとしている」

関東大震災では「本所被服廠跡」と呼ばれる広場で3万8000人もの人が焼死しました。避難してきた人が持ち込んだ荷物などに引火し、大きな炎となり、火災旋風が発生した可能性が指摘されています。

着火から、およそ40秒後。画面の右側に注目すると、突然、炎が渦を巻き、「火災旋風」が発生しました。

<東京理科大学 桑名一徳教授>
「炎はとても熱いので上昇気流が発生します。上昇気流が発生しているところに横風がおきて、その兼ね合いで、回転する流れがおきまして、火災旋風が発生します」

実験では、画面の左奥でも火災旋風が発生。右の方向にゆっくり移動し、戻るような動きを見せました。火災旋風は風に流され、住宅街を移動し、家々を焼き尽くすと言われています。

木造住宅の密集地域は県内にも数多くあります。南海トラフ巨大地震では、火災により最大6万6000棟が焼失、死者は3300人に及ぶと想定されています。

さらに、現代では高層ビルも火災旋風の発生原因となる可能性があるといいます。そこで次の実験では、高さ5mの壁を2枚用意。高層ビルに見立てました。ビル風が通り抜けるよう隙間を開けて建て、そのたもとで火災が起きる想定です。

静かに燃え始めた炎。しかし、わずか15秒後…。炎が激しく渦を巻き、立ち上りました。その高さは、およそ7m。壁の高さを超えたのです。

<東京理科大学 桑名一徳教授>
「ビルを回り込むようにして渦ができるということと(ビルの)すき間から通る風が重なり合って、うまく渦を強め合う瞬間があるように見えました。大きな火災があればビルの一番上の所まで来る可能性はあります」

ビルの間を吹き抜ける風に火災旋風を強める作用があることが今回の実験で初めて明らかになりました。また、炎の動きをスローで見ると、地面にまいた木片や紙片を巻き込んでいるのが分かります。

100年前の関東大震災で人や馬などを巻き上げた火災旋風の風速は、国内で発生する最大級の竜巻に匹敵するといいます。

さらに、渦の中心の温度は1000℃以上。超高温であらゆる物を焼き尽くすのです。

<東京理科大学 桑名一徳教授>
「同時多発的にいろいろな所が火事になることも考えられます。そういう状況が感じられたら、離れた場所に逃げることを考えなければならない」

地震で大規模な火災が起きたらどこに逃げるのか。考えておくことが必要です。

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