〈生き物ヒトとなり〉(73)アナグマ タヌキとすみ分け「同じ穴のムジナ」

アナグマ 撮影・小松常光

 アナグマという和名であるが、実際にはクマではなくイタチに近い仲間である。ムジナと呼ばれることもある。ただし、地域によっては、ムジナはタヌキを指す場合もあり、また、アナグマとタヌキの両方をムジナと呼ぶ地域もあるようだ。非常にややこしい。

 アナグマは擬死、いわゆる「狸たぬき寝入り」をすることが知られており、これまたややこしい。

 ミミズを主要な食料としており、土中の甲虫(こうちゅう)の幼虫なども食べる。また、カキなどの果物も食べる雑食性である。

 鋭い爪を持っており、その名の通りよく穴を掘る。特に繁殖に使われる巣穴は、入り口がいくつもある大規模なものだそうだ。

 夜行性で、昼間は掘った穴の中で休むとされる。実際に、夜間に活動している事例が多く報告されているが、山間部に調査に赴いた際、昼間に穴から出ているアナグマに遭遇したこともある。

 アナグマが掘った穴は、タヌキをはじめ、さまざまな動物に利用される。

 南米のオオアルマジロは、2日に一つのペースで深さ5メートル以上に達する穴を掘り、やはりさまざまな動物がその穴を利用するそうで、生態系に大きな影響を与えているという報告がある。

 穴を他の生き物が利用する点ではアナグマも共通している。その穴を利用する動物たちは、まさに「同じ穴のムジナ」であるが、最近の研究によると、実際には、アナグマとタヌキは、同じ穴を使う場合にも時期や時間帯をずらして別々に使っているようだ。

 ヒトの社会でも「穴があったら入りたい」ときが誰しもあるだろうが、入っても「同じ穴のムジナ」とは言われないように気を付けたいものである。(佐賀大農学部教授 徳田誠)

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