【ミャンマー】ネットも外為取引監視、チャット揺り戻し[金融]

ミャンマー軍事政権統制下の中央銀行は8月31日、両替について、インターネット上に通貨チャットの実勢レートを掲載したり実際に取引したりした人の取り締まりを強化するとあらためて通知した。実勢レートは一時1米ドル(約146円)=4,000チャット台近くまで下がったが、これを容認せず、市中の両替商を含めて取引の監視を強化している。相場は揺り戻しており、3日時点で同3,600チャット台となっている。

軍政下の当局は、交流サイト(SNS)や実店舗で顧客を装って捜査を進めている。これまでは両替商による実勢レートでの米ドルの売買を見逃していたが、中央銀行は同2,100チャットに設定している公定レートとの大幅な乖離(かいり)を認めず、妥協ラインとして同2,900チャット台での企業間の外国為替取引を容認するようになっている。

最大都市ヤンゴンの両替商は摘発リスクを恐れ、2週間近くにわたって事実上の一時休業を続けている。ある両替関係者は3日、「電話の接続を切っている。取引できるようになれば電話がつながるようになる」と話した。ただ、誰に密告されるか分からず、慎重になっているという。

軍政側は、チャット安の要因として、国軍に抵抗する「テロリスト」の工作活動を挙げている。米国による制裁対象の拡大や高額紙幣「2万チャット札」の発行は影響していないと主張している。

軍政がこれまでに2万チャット札の供給量を制限していることは事実で、「いまだに一度も見かけたことがない」(ヤンゴンの飲食店関係者)との声も出る。ただ、新紙幣の発行はインフレを恐れる市民感情を刺激し、チャットへの信頼をさらに失墜させている。

中銀は同日、海外に出稼ぎに出ていたミャンマー人が外貨を国内に持ち込んだ際には、金額を申告しなければならないとも指摘した。外貨の保有に関しては「1万米ドル相当までを6カ月間保有することしか認めていない」としており、範囲を超えた際は売却しなければならないと強調している。

これに対し両替関係者は、「誰も守らず、意味のない規制だ」と話した。国軍に抵抗する民主派による挙国一致政府(NUG)が2万チャット札を「違法紙幣」だと発表していることも実質的な意味はないとし、「対立する政治の空回りをなんとかしてほしい」とこぼした。

© 株式会社NNA