茨城県内タクシー人手不足 低稼働率に業界危機感 運賃改定で待遇改善期待

運転手不足で車庫に止まったままのタクシー車両=水戸市見川

新型コロナウイルスの5類移行で人の往来が回復する中、茨城県内タクシー業界が人手不足に苦しんでいる。乗務員数はコロナ禍前に比べ500人以上減り、一部事業者は乗務員不足で稼働できない車両が駐車場に止まったまま。独自の取り組みで乗務員を増やしている事業者はあるものの、業界は危機感を募らせている。

県ハイヤー・タクシー協会(出野清秀会長)によると、個人営業を除く県内の乗務員数は2703人(7月末現在)。2019年3月末(3269人)に比べ、566人減少した。こうした動きは他地域でも同じで、全国60地域の法人タクシー乗務員数もコロナ禍前に比べ20%前後減少しているという。

水戸市見川のNK観光は現在、乗務員約60人を雇用しているが、以前は80人近くいたという。乗務員減少でタクシー稼働率は70%台から50%台へ下落し、駐車場には稼働できないタクシー車両が止まる。売上はコロナ禍前に比べ20%減ったという。

同社の中本邦彦社長は、定年退職や体調不良による離職で乗務員が減る中、コロナ禍で「新規の応募者がぱったり止まった。募集をかけても来ない」と渋い表情だ。

多くの事業者が乗務員不足に頭を悩ませる一方、つくば市大曽根の大曽根タクシーでは昨年、給与制度を改定。有給休暇を取りやすくしたほか、給与体系も見直して基本給を付け、乗務員が一定の収入を確保できるようにした。同社には昨年1月から13人が入社し、今月までに新たに5人を加える予定という。塚本一也社長は「乗務員が働きやすい環境を整えたことが良かったのでは」と語った。

県ハイヤー・タクシー協会が期待するのは、今月19日からの運賃改定による待遇改善だ。

改定では、普通車の初乗り運賃の上限は現行の740円から500円に下がる一方、距離が2キロから1.1キロに短くなる。消費税上昇に伴う改定を除けば、改定は2007年以来約16年ぶり。

同協会は、パート勤務など柔軟な働き方ができる利点を生かし、女性乗務員の育成も推進し、乗務員確保につなげたい考え。

出野会長は「乗務員を雇い入れなければ先細りする。運賃改定のタイミングで『タクシー乗務員は稼げる』とPRしたい。何とか減少を食い止めなければ」と語った。

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