大分県教委が高校中退者の学び直しに注力 教員OBが高卒認定挑戦をサポート【大分県】

学び直しを希望する高校中退者を対象にした授業。マンツーマンで教えている=大分市高城新町

 県教委は不登校や就労などで高校を中退した人たちの「学び直し」に力を入れている。就職やキャリアアップに不利な状況を改善し、経済的困窮につながることを防ぐ狙い。教員OBが希望者をサポートしながら、高校卒業程度認定試験(旧・大学入学資格検定)への挑戦を後押しする。2021年度から今年8月までに計17人が合格し、進学や資格取得につなげている。

 文部科学省の調査によると、県内は21年度、公立・私立の全高校生の1.1%に当たる318人が中退した。▽学校になじめない▽就職を考えている▽家庭の事情―など理由はさまざま。中退につながる可能性のある不登校者数は人口千人当たり29.2人で、都道府県別で最多だった。

 県教委によると、進路が決まっていない中退者も多く、支援体制をどう構築するかが課題だった。対策の一つとして21年度から、無料で学び直しを手助けする「学びのステップアップアドバイザー」(学習支援員)の取り組みを始めた。

 無料学習塾の運営実績があるNPO法人「地域の宝育成支援センター」(大分市)に委託し、元高校教諭の10人が相談に応じて勉強を教えている。センターが企業から借りている会議室などを使い、マンツーマンで授業をする。

 22年度までの2年間で計25人を教えた。23年度は7月末時点で7人。

 大分市高城新町の教室では8月22日、市内の男性(23)が新たに授業を受けた。中退後はアルバイトで働いているといい、「高卒認定に合格して、安定した職業に就けるよう国家試験に挑戦したい」と述べた。自主学習をしながら月に数回のペースで教室に通う。

 認定に合格し、今春から別府大短期大学部に通う由布市挾間町向原の西崎匠さん(23)は「自分一人での勉強は行き詰まる。先生に相談しながら進めることができた」と振り返る。

 病気の通院で単位数が足りず高校を退学したという。今は小学校教諭を目指している。「一度は諦めた夢。友人らと共に学ぶ毎日が充実している」と明かす。

 センターは希望者からの要望を踏まえ、本年度から大分市に加えて中津、津久見、竹田各市でも授業を受けられるようにした。

 指導に当たるセンターの小野二生(つぎお)理事長(72)は「学校になじめなかった人にもそれぞれに合った学び方をアドバイスしている。新たなステップに向けた挑戦を後押ししたい」と話している。

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