岡部耕大さん訃報 故郷・松浦で悲しみ広がる 演技指導に感謝

身ぶりを交えながら演技を指導する岡部さん=2014年7月、松浦市立御厨小

 8月25日に78歳で亡くなった長崎県松浦市出身の劇作家、岡部耕大さんは東京公演を控え、新たな脚本も仕上げる途中だった。突然の訃報に故郷・松浦市では3日、友人らに悲しみが広がり、演技指導を受けた若者からは感謝の声が聞かれた。
 遺族によると、8月5日の東京公演を1週間後に控えた7月29日、川崎市の自宅で倒れて入院。すぐに意識がなくなり、そのまま帰らぬ人となったという。
 地元後援会で事務局長の吉本務さん(77)は松浦市立志佐小、中時代の同級生。1985年、同市で撮影されたテレビドラマを岡部さんが手がけた際、ロケ地の下見を手伝ってから交流が深まったという。
 今年7月には電話口で「稽古で忙しい」と語っていたという。「『80歳まで頑張る』と以前から口にしていたが…。もう帰ってこんと思うと寂しい。松浦が好きだったから地元の米を(供え物に)送ろうと思う」と声を詰まらせた。
 劇作家として数々の名作、功績を残してきた傍ら、同市では2007~15年に市内の小学校で演技を指導した。地域の民話、昔話などを基に毎年1校ずつ児童によるミュージカル上演に取り組んだ。
 14年には市立御厨小6年生を指導。当時メンバーだった市教委生涯学習課の吉元優奈さん(21)は「人前で声を出す楽しさを知ることができた」と感謝。昨年8月、最後の地元公演となった市文化会館で岡部さんと再会しており、「『あの劇は良かったね』と覚えてくれていた」と振り返った。
 岡部さんの事務所に所属する長男大吾さん(46)によると、岡部さんは幼い頃から尊敬していた祖母・キヨさんをモデルにした新たな脚本を仕上げる途中だった。大吾さんは「仲間と物語の続きを考え、形にしたい。それができた上でお別れの会を企画できれば」と話した。

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