おいしい料理に魔法をひとさじ 須賀野さんと中山さん スパイス×地元食材で魅力発信

スパイスを使った商品を手がける須賀野さん(右)と中山さん=長崎市田中町

 長崎市東部の中尾地区を拠点にスパイスを使った商品の開発や製造にいそしむ2人組がいる。ユニット名は「秘密のキッチン」。長崎市出身でスパイスや薬膳料理の専門家、須賀野美奈子さん(47)=千葉県=と、工場長の中山橘子さん(43)=同市田中町=は「スパイス×地元食材」で長崎の魅力を全国、ひいては世界に発信しようともくろんでいる。
 変幻自在にスパイスを操る須賀野さんは、鋭敏な舌で記憶した味を再現できる感覚の持ち主。さらに洗練してオリジナルの料理に落とし込むことが得意で、中山さんは「すっかり胃袋をつかまれてしまった」という。「スパイスを使っておいしくて体にいい、作ると楽しい循環をつくり、世界のいろんな食材を五感で経験する面白さを伝えたい」。食べることが大好きな2人で2017年8月から18年12月まで月に1度、福岡市で間借り営業しスパイスカレーを提供したのが活動の原点。ダチョウの首肉やブリの目の周りなど、珍しい食材を使ったカレーは評判を呼び、21年まで長崎県内や沖縄などでも開催した。
 須賀野さんは美容薬膳教室を開いたり、顧問を務めるスーパーマーケットで開発した総菜弁当がヒット商品になったり。スパイスを使った仕事は多岐にわたる。一方でチャイ(インド式ミルクティー)やホットワインが自宅で手軽に作れるキットなど、独自の商品も販売。そんな中、現在の主力商品「スパイスを愉(たの)しむ林檎(りんご)と生姜(しょうが)のリッチソース」(1296円)が同年9月、偶然から生まれた。

チーム・シェフコンクールでW受賞した「スパイスを愉しむ林檎と生姜のリッチソース」

 中山さんから土付きのショウガを大量に送り付けられた須賀野さん。体調を崩していたが、冷蔵庫にも入りきらないため、傷まないうちに加熱してシロップにするしかないと考えた。家にあった旬のリンゴと大量のスパイスを入れて作ってはみたが、気力も湧かず加熱と放置を繰り返すうち、煮詰まったものを味見してみると、官能的な香りをまとったソースに仕上がっていたのだ。「似たようなものは、どこにもない。これはいける」。商品化に動き出した。
 原材料にもこだわり、島原産の有機ショウガと国産のキビ砂糖やリンゴを使用。ほんのひとさじ、アイスにかければデザートに、焼いた肉に添えればうまみを引き立たせる調味料に変身する、万能な逸品が完成した。全国の生産者や加工品製造業者が参加し、食のプロが審査員を務め企業とのマッチングができる「チーム・シェフコンクール」では「自然食品F&F賞」「チーム・シェフご紹介賞」をW受賞。全国に販路が広がる機会を得た。
 これに続けと、平戸産レモンを使ったクラフトコーラのもと「入り江のレモンシロップ」(1944円)も発売したばかり。両商品は「秘密のキッチン」のオンラインショップと長崎市岡町のブルー・ブロンズ・ストアで取り扱っている。「おいしい料理に魔法をひとさじ」-。スパイスの力で長崎の特産物の魅力を最大限に引き上げる2人の快進撃が始まった。

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