降らせたまえ、合掌 中山・岡村観音で雨乞い祈禱、半世紀ぶりか

特別に本尊をご開帳して雨乞いの祈禱が行われた=中山町・岡村観音

 深刻化する水不足を憂えて、中山町岡の最上三十三観音第14番札所・岡村観音で3日、特別に本尊をご開帳して雨乞いの祈禱(きとう)が行われた。本尊は雨乞いの観音と知られている。前回の祈禱は50年ほど前といい、関係者が記憶にないほど長く行われていなかった。日照りが続けば農作物への打撃も懸念され、関係者は一日も早くまとまった雨が降るようにと願った。

 山形地方気象台によると、中山町に近い観測地点では、大江町左沢の8月の降水量が39ミリと平年比27%で、観測史上4番目に少なかった。同月は降水量0ミリの日数が25日間あり、最も多かった29日でも22.5ミリにとどまった。8月31日に山形市で最高気温38.2度を記録するなど県内は猛暑が続いた。

 水不足は特に、庄内地域で顕著となっている。水力発電所の運転を停止したり、農業用ため池が底をついたりといった影響が出ている。

 岡村観音には、かつて干ばつで苦しむ農民のために高僧・行基が千手観音を作って祈ったところ、雨が降り、田畑が生き返ったとの伝説が残る。少雨となった50年ほど前も、当時の住職が干支(えと)の子(ね)年にしか開帳しない本尊を特別に開けて祈禱すると、雨が降ったという。

 この日は別当・正法寺(中山町長崎)の村山英俊住職(47)が、天に昇り雨を降らせるとされる竜の彫刻や水墨画が並ぶ堂内で祈禱を行った。静かに扉が開かれ、千手観音が姿を現すと、住民らは線香を上げてじっと目を閉じ、手を合わせた。

 世話人代表の農業石川貞義さん(74)=同町岡=は「ざーっと一時的に降ることがあっても、長く降らず、こんなに雨が少ない年はなかった。(町内を流れる農業用水路の)最上堰(ぜき)があるので稲はまだ大丈夫だが、スモモやリンゴはお手上げ状態。一晩でもいいから降ってほしい」と願った。

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