残暑、山海の幸直撃 リンゴ日焼け、エビ変色

強い日差しを浴び、一部が変色したリンゴ=金沢市大桑町の果樹園

  ●県内農家、漁師 影響の長期化懸念

 厳しい残暑が、石川の秋を彩る山海の幸を直撃している。10月にかけて収穫ピークを迎えるリンゴ畑では強い日差しが原因で表面が傷む「日焼け」の被害が確認され、底引き網漁では海水温度の上昇でエビの一部に変色などが見られた。9月に入っても酷暑は続いており、農家や漁師は影響の長期化を心配している。

 金沢市大桑町の浦野果樹園では、9月後半に収穫が始まるリンゴ「秋映(あきばえ)」のほか、10月からの「秋星(しゅうせい)」など約60個で日焼けによる変色が見つかった。

  ●いくら対策しても「焼け石に水」

 果樹園を営む浦野久司さん(67)=石川県果樹園芸協会りんご部会長=は日光を遮るネットを張るなど対策を講じているが、「ほとんど効果がなく、焼け石に水」の状況だ。

 浦野さんによると、日焼けの被害がない場合でも、昼夜の寒暖差が小さい影響で色付きが悪くなる恐れがある。実際、わせ種の「つがる」は色が白いままのリンゴが目立ったという。

  ●袋掛けなし「全滅」

 羽咋市の鹿島路りんご生産組合では「つがる」の収穫量の半分ほどが茶色に変色したと訴える農家も。同組合員で、志賀町で果樹園を経営する赤池克信さん(76)は「袋掛けしていないリンゴは全滅に近い。色付きも悪く、これほど猛暑の影響が出たのは初めてだ」と嘆いた。

 高温障害は海産物にも影を落とす。とりわけ、水深の深い海に生息するエビ類は温度変化に弱く、底引き網漁の初物では一部で白っぽく変色した甘エビやガスエビが確認された。

 県水産総合センターなどによると、県周辺の海域では8月16~20日の海面温度が27~29度台。過去5年間の平均と比べて最大で3度高く、変色の原因となった可能性がある。

 色の変化を防ぐ一番の対策は冷やすことで、漁業者はエビを浸す冷却水に大量の氷を投入するなどして鮮度維持に余念がない。

 養蜂場では蜂の巣を形作る蜜蝋が溶け出す懸念が生じている。金沢、能美両市で蜂蜜を生産する金澤やまぎし養蜂場によると、中の幼虫が死んでしまうのを避けるため、巣箱に断熱カバーを取り付けて温度管理に万全を期しているという。

 石川県生産振興課の担当者は「高温少雨が続けば、他の作物などにも悪影響が及ぶかもしれない」と懸念。コメ農家に対しては、高温の影響で収穫適期が4~6日ほど早まる可能性があり、白く変色した「未熟粒」が発生しやすいとして注意を呼び掛けている。

  ●金沢35.1度、まだ猛暑日

  ●熱中症2人搬送

 4日の石川県内は厳しい暑さが続き、金沢で35.1度の猛暑日、輪島で32.8度を観測するなど、最高気温は平年より3~6度高くなった。各消防によると、金沢市と能美市でいずれも20代男性が熱中症の疑いで救急搬送された。いずれも軽症の見込み。

 金沢地方気象台によると、5日は気圧の谷の影響を受けて雨の降る所がある。雨の降りやすい天気が続く見込みで、6、7日は気温の上昇が抑えられ、金沢の予想最高気温はそれぞれ平年並みの30度、29度となっている。

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