牧野富太郎が付けた学名、今も300種使用 生涯たどる講演会 京都・宇治

牧野の描いた緻密な植物図を挙げながら、生涯の功績をたどった講演会(宇治市広野町・市植物公園)

 NHK連続テレビ小説「らんまん」の主人公のモデル、牧野富太郎(1862~1957)の生涯をたどる講演会が3日、京都府宇治市広野町の市植物公園で開かれた。東京の練馬区立牧野記念庭園で学芸員をする田中純子さん(59)が講師を務め、牧野が描いた精緻な植物図とともに「日本の植物分類学の父」としての功績を伝えた。

 牧野は高知県佐川町の生まれで、東大の植物学教室で講師を務めた。植物図を数多く描いており、田中さんは「図を描くにはよく観察することが必要で、植物への深い理解につながった」と説明した。

 1889年に日本で初めて、新種にラテン語の学名「Theligonum japonicum Okubo et Makino」(ヤマトグサ)を命名して発表。生涯では約1400種に学名を付けたという。「約300種が現在も標準として使われている。日本人として一番の数であり、見識眼の高さがうかがえる」と話した。

 日本の植物誌作成に尽力しながら、各地の植物同好会で採集指導に当たった側面などにも触れ「植物の面白さを知ってもらいたいと、知識の普及活動に貢献した」と指摘。「子どもの頃から植物がこの上なく好きな気持ちが、生涯続いた人だったと思う」と語った。

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