「誠意のある対応していただけていない」憤る遺族と存続の方針変えぬこども園 園児バス置き去り死事件から1年 すれ違う思い

2022年9月、静岡県牧之原市の認定こども園「川崎幼稚園」で3歳の女の子が通園バスの中に置き去りにされ、熱中症で死亡した事件から9月5日で、1年が経ちました。「園は今後、存続すべきなのか」、運営法人、行政、遺族の思いは、さまざまです。

【写真を見る】「誠意のある対応していただけていない」憤る遺族と存続の方針変えぬこども園 園児バス置き去り死事件から1年 すれ違う思い

<滝澤悠希キャスター>
「1年前、バスが園に到着した午前8時50分です。手元の温度計は、29℃まで上がっています。そして、事件現場付近の献花台には、多くの花や飲み物が供えられています」

5日の現場付近の最高気温は31.3℃。事件当初を思い起こさせる暑さの中、丸1年となりました。

この事件は、2022年9月、牧之原市の認定こども園「川崎幼稚園」で河本千奈ちゃん(当時3)が炎天下の通園バスの中に約5時間取り残され、熱中症で死亡したものです。

事件現場付近に設けられた献花台には、朝から多くの人が訪れ、千奈ちゃんの死を悼みました。

<訪れた人>
「暑くて、暑くて、服を脱いで飲み物飲んで意識を失って亡くなったと思うのと、あんまりかわいそうでつらい」
「幼稚園は安全なところ。なのに、こんな事件が起きて、悲しくてしょうがない」

千奈ちゃんの父親(39)は報道陣の取材に応じ、変わらない娘への“愛情”を語りました。

<河本千奈ちゃんの父親>
「千奈の存在っていうのは本当に大きかったんだなと。いまでも次女もそうですけど、家族の主役の1人だと思っています」

一方で、娘の命を奪った園の対応には怒りが募るばかりだといいます。

<榛原学園 増田立義元理事長>
「(遺族から)廃園をしないのか?と言われていた。廃園という言葉を書くようにした」

事件当初、当時の理事長は川崎幼稚園について、遺族の意向を踏まえて「廃園に致します」と念書を交わしていました。

しかし、川崎幼稚園は今年度も新たな園児を受け入れていて、いまも110人の園児が通っています。遺族側は「約束を反故にされた」と憤りの言葉を口にします。

<河本千奈ちゃんの父親>
「川崎幼稚園、学校法人榛原学園に対して誠意のある対応をしていただけていないので怒りがある」

牧之原市の杉本基久雄市長は4日、榛原学園は「遺族と交わした廃園の約束を“守るべき”」と指摘。川崎幼稚園の定員分の園児をほかの保育施設で受け入れられるよう、施設の充実を図っています。

<牧之原市 杉本基久雄市長>
「来年度の社会福祉事業団の採用は5人増やす。(川崎幼稚園の)定員分まで預かれない状況なので、ニーズがあるなしにかかわらず、定員枠まで上げる」

一方、園の運営法人は4日夜、今後も園を存続させる方針を示しました。

<榛原学園 増田多朗理事長>
「遺族の悲痛な思いは十分理解している。一方で、希望者がいる以上は園の継続をしていかなければいけない。誠心誠意、尽くしてきたと思っているが、より丁寧な対応をしていきたい」

小さな命を守れなかった責任はどこにあるのか。警察は2022年12月、バスを運転していた増田立義元理事長ら4人を業務上過失致死の疑いで書類送検、静岡地検による捜査は、9か月にも及んでいます。

© 静岡放送株式会社