相次いだ記録的豪雨「胸まで水があった」それでも…災害救助法が適用できない2つの基準【わたしの防災】

<中西結香記者>
「沼津市原地区を流れる沼川です。大雨の影響でしょうか。川の岸が崩れかかっています」

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2023年6月、静岡県内を襲った記録的な豪雨。沼津市の原・浮島地区では、100戸以上の床上浸水が発生しました。

<沼津市 原新田自治会 山本弘一元会長>
「夜中にボートを出して、妻を乗せて公会堂に避難した」
Q.自宅のどのくらいまで水が?
「けさ行ったら、道路で胸まで水があった」

こうした自然災害で、甚大な被害が起きたとき適用されるのが「災害救助法」。住宅の応急修理や避難生活の費用などを国と県が負担します。

しかし、実際に災害救助法が適用されたのは、川の堤防が決壊した磐田市だけ。沼津市など県内の他の自治体には適用されませんでした。被害を受けた地区で、長く自治会長を務めた山本さんは「災害救助法」のあり方を「もっと考えてほしい」と訴えます。

<沼津市 原新田自治会 山本弘一元会長>
「小さい規模の浸水がここ数年の間に、何度も起きていることも踏まえて、その辺りまで考えていただきたい」

なぜ、沼津市には、災害救助法が適用されなかったのか。市の危機管理担当者は、適用には高いハードルがあると説明します。

<沼津市 真野正実危機管理監>
Q.沼津市として(災害救助法の適用)に手を挙げたいことは県に伝えた?
「県と協議する中で『要件を満たしていないよね』ということで手を下げさせていただいた」

基準は2つ。1つ目は「建物の被害」です。人口およそ18万人の沼津市の場合、300世帯以上の床上浸水がないと適用になりません。沼津市の床上浸水はおよそ130世帯でした。

2つ目は「多数の生命・身体への危害、または、その恐れがある場合」。こちらは人数などの線引きがなく、基準があいまいでした。

災害救助法の適用を決定するのは、県知事です。基準を明確化するよう全国知事会などを通じて、国に求めてきました。

<静岡県危機管理部 山田勝彦危機報道官>
「磐田市は敷地川の破堤が確認できた。そのほかの4市は、避難者数がわずかであり、被害棟数は不明で、破堤などそのほかの情報も確認できなかったため、こうした結果になった」

国からは、8月末付けで「災害対策本部の設置」や「住宅被害の発生」、市や町から「緊急安全確保」が指示されている場合など、具体的な事例が示されました。しかし、「一定規模」や「一定期間」など、あいまいな部分もあり国に再度、確認する方針です。

床上浸水の被害にあった住民は、迅速な対応を求めています。

<沼津市 原新田自治会 山本弘一元会長>
「こんなことが何年も、3年に2回も続いたら、この年齢だと、ほかに移ろうにも移れないし『我慢するしかないよね』という声しか聞こえてこないんだけどね」
Q.そういう声が行政に届いているでしょうか?
「届かないでしょうね。届けたい」

災害救助法は昭和22年(1947年)、70年以上前にできた法律です。全国的にみても頻発化、激甚化している風水害は想定できてない可能性があります。

災害救助法が幅広く活用できるよう制度を改善していく必要があります。

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