【香港】本土企業の6割が香港を選択[経済] 海外への足がかり、専門力に強み

中国本土企業の多くが、依然として香港を海外進出の足がかりの地と認識していることが、香港貿易発展局(HKTDC)の調査で明らかになった。調査対象となった本土企業の6割以上が、海外進出に必要な専門サービスを求めて香港を活用したいと回答。回答企業の9割近くが向こう1~3年の海外進出を計画するなど、本土企業の海外熱も改めて浮き彫りになった。

貿易発展局が5日に発表した。調査は5~7月、主に粤港澳大湾区(グレーターベイエリア、中国広東省の珠江デルタ9市と香港、マカオで形成する一大経済圏)と長江デルタの本土企業を対象に実施。791社から有効回答を得た。

海外進出に際して香港の専門サービスを活用すると回答した企業は全体の62.1%、大湾区内で主に事業を手がける本土企業に限れば67.6%に上った。同局は調査結果を踏まえ、香港は本土企業の海外進出に当たって最も選ばれるプラットフォームだと強調している。

本土企業に対して香港の業者が提供できるサービスは、金融、法務などの分野で多岐にわたると同局は指摘。香港が誇る長所として◇総合的な金融・専門サービス◇国際的リソースを利用したリスク防止機能◇業務の確実性の向上◇国際的に認められた検査技術サービス——など8点を挙げた。

■課題解決を支援

香港で事業を手がける本土企業の一部を対象に同局が昨年末から今年初めにかけて上海市商務委員会と合同で行った調査によれば、各種の試練に直面していると答えた企業は少なくなかった。具体的な試練としては◇世界経済の減速や地政学的問題◇米国の利上げや資金不足◇本土の脱炭素政策やESG(環境・社会・企業統治)に関する責任が投資ポートフォリオに及ぼす影響——などが挙がった。このような試練に直面する本土企業は、香港を利用して海外進出のための資金調達、財務プラン、海外でのコンプライアンス(法令順守)といった課題を解決し、国際業務を引き続き推進しているという。

ESGに関しては、大湾区企業の90%近くが、向こう5年以内にESG関連のプロジェクトへの投資を増やすと回答している。また本土企業は目下、資金使途をサステナブル(持続可能)な社会づくりに限定するサステナビリティーボンドのアジア最大の発行者だ。同局は、アジア最大のグリーン金融センターであり、最良のESG実践地域でもある香港は、この分野で適切なサービスを本土企業に提供できると強調した。

世界経済の減速や長期化する米中対立といった逆風が強いにもかかわらず、本土企業の海外進出意欲が衰えていないことも明らかになった。回答企業の83.9%が現在、地政学的緊張や需要不足など何らかの試練に直面していると答えた一方、向こう3年以内に海外に進出して国際業務を推進することを計画しているとの回答は89.8%に達した。

■RCEPと一帯一路に人気

国外の進出先として人気が特に高かったのは、地域的な包括的経済連携(RCEP)参加国と、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」の沿線国だ。回答企業の71.6%が中国を除くRCEP参加14カ国、64.3%がRCEP参加国を除く一帯一路およびその関連新興市場への進出を希望すると答えた。

RCEP参加国のうち、進出先として最も人気が高かったのはシンガポールで、30.7%の企業が挙げた。2位は最近まで中国との関係がぎくしゃくしていたオーストラリアで23.8%。以下、マレーシア(22.6%)、インドネシア(20.0%)、日本(19.0%)と続いた。

一帯一路関連ではサウジアラビアなど中東を挙げた企業が33.2%で最も多い。中東欧が25.5%でこれに続き、以下は南米(17.1%)、アフリカ(12.1%)の順となった。

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