黒部宇奈月キャニオンルート 新たな観光にワクワク

キャニオンルートの上部専用軌道を走る蓄電池汽関車。区間に高熱隧道がある

  ●プレスツアーで体験

 富山県は6日、宇奈月温泉と黒部ダムを結ぶ「黒部宇奈月キャニオンルート」のプレスツアーを実施した。来年6月30日の一般開放に向けた企画に参加すると、黒部奥山の秘境の魅力を味わいながら、電源開発の難工事の歴史を体感することができた。昭和初期から活躍する特殊な乗り物にもワクワクし、霊峰立山一帯の周遊を促す新たな観光ルートへ期待が膨らんだ。(社会部・大野慎也)

 キャニオンルートは総延長18キロ。黒部峡谷鉄道の欅平(けやきだいら)駅―黒部ダム間にある関西電力の物資輸送路で、黒部ルートとも呼ばれる。黒部川第3、第4発電所を建設するための工事用トンネルとして開通した。

 欅平から工事用トロッコに揺られてトンネルを進むと、高低差200メートルの竪坑(たてこう)エレベーターに到着。地下基地のような雰囲気に胸を躍らせながら一気に上昇した。竪坑展望台に立ち寄ったが、後立山(うしろたてやま)連峰の姿は雲に隠れて見えず。肩を落としていると、ガイドが「あれが宿舎のぶつかった岸壁です」と教えてくれた。

 1938(昭和13)年12月、「泡雪崩(ほうなだれ)」の激しい風で作業員宿舎が約580メートル離れた対岸へ吹き飛び、死者37人、行方不明者47人の被害を出した。

 キャニオンルートの目玉の一つは、吉村昭の小説「高熱隧道(こうねつずいどう)」で有名な高温地帯だ。展望台から戻り、上部専用軌道を走る蓄電池機関車に乗って高温地帯に近づくと、窮屈な車内が次第に温かくなり、硫黄臭が漂った。高温地帯の温度は40度ほどだったが、掘削工事時は110~120度で、ダイナマイトが自然発火する事故も起きたそうだ。

 軌道の途中、外の眺めが楽しめる場所では仙人谷ダムが迫り、第4発電所の発電機室では直径3.3メートルの水車などが見学できた。

 斜度34度を昇降する資材輸送設備「インクライン」やトンネル内を走るバスを乗り継ぎ黒部ダムに着いた。好天であれば、途中で剱岳など北アルプスの絶景が目に入るという。悪天候に悔しさも募ったが、約3時間の旅は特別感でいっぱいだった。

黒部川第4発電所内で説明を受ける報道関係者

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