桜ジャージー職人魂つなぐ ラグビーW杯出場の日本代表 小矢部のゴールドウイン手掛け

日本代表ジャージーを手に笑顔を見せる沼田さん(左)と木村さん=小矢部市のゴールドウインテック・ラボ

  ●75歳沼田さん、第一線退く 若手チーム開発

 9日開幕のラグビーワールドカップ(W杯)に出場する日本代表のジャージーは、小矢部市に生産拠点があるゴールドウイン(東京)が手掛けた。商品研究部技術主席の沼田喜四司(きよし)さん(75)=同市=が長年製作に携わり強度と着心地の良さを追求してきたが、今大会は沼田さんが第一線を退き、若手技術者が開発を担当した。先人が紡いできた伝統と技術を受け継いだ「桜の戦闘服」がいよいよ最高峰の舞台に登場し、日本の勝利を後押しする。

 今大会のジャージーを作ったのは小矢部市清沢の研究開発拠点「テック・ラボ」の若手社員だ。チームリーダーの木村航太さん(33)らは、沼田さんが手掛けた前回2019年日本大会のジャージーを基に開発を進めた。

 ラグビーでは、ポジションごとに選手の役割や体形が違う。サイズが合わないと動きにくく、ゆとりが大きいと相手につかまれやすくなる。激しく体をぶつけ合う競技に適した機能が必要となる。

 開発では選手84人の体を3Dスキャンでデータ化し、ポジションごとの平均的な体形の情報を得た。フォワードとバックスの2種類に分けて試作し、代表合宿に5回持ち込んで選手に試着してもらった。

 苦労の末、耐久性や軽さ、快適性は前回大会より向上。ファンから集めた1266枚のポリエステル製ウエアを再利用するなど生地にもこだわった。木村さんは「普通の服作りの考えが通用せず、難しかった」と振り返る。

 前回大会まで20年以上、代表のジャージーを製作してきた沼田さんは「(出来栄えに)安心した。チームで取り組み、よくやってくれた」と満足した様子で語った。

 沼田さんは1966(昭和41)年に入社。長年スポーツウエア開発に携わり、ラグビー日本代表のジャージーでは機能性の向上に大きく貢献してきた。2006年に「現代の名工」に選ばれている。

 小矢部市出身の沼田さんは、小学3年生から37歳まで津沢地区の夜高あんどんの製作に関わった。竹組で立体的にあんどんを作る経験がスポーツウエアの立体構造を考える際に役立ってきたという。

 沼田さんは「前回の日本大会は応援の力もあった。今回はアウェーで実力を発揮して勝ってほしい」とエールを送った。木村さんは「主役は選手だが、あと数%のところで、ウエアが活躍して勝利の力になれば、うれしい」とチームの躍進を期待した。

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