福井県の足羽山で見つかったメクラヨコエビは新種だった 笏谷石採石場跡地の坑道内に生息

足羽山の坑道内で発見されたアスワメクラヨコエビ(福井市自然史博物館提供)

 福井県の福井市自然史博物館は9月8日、同市の足羽山にある笏谷石(しゃくだにいし)採石場跡地の一つ「七ツ尾口」坑道内で発見した「メクラヨコエビ」の一種が新種と分かったと発表した。足羽山の坑道内で見つかった新種の生物は5例目で、和名を「アスワメクラヨコエビ」と名付けた。

 同博物館の梅村信哉学芸員(44)と元特別館長の吉澤康暢さん(78)が2017年11月、坑道内の深い水たまりで採取した。広島大学と京都大学の協力を得て、形態の詳細な調査やDNA解析などを行った結果、触角の長さや脚の毛の数などが従来の種と異なることが分かり、新種と断定された。今年6月にニュージーランドの動物分類学の学術誌に論文が掲載された。

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 同博物館によると、メクラヨコエビは地下水のある洞窟内などに生息し、体の左右どちらかを下にして水中を移動する。これまでに東アジアを中心に41種が見つかっており、そのうち10種は日本で確認されている。

 これまでに採取したアスワメクラヨコエビは体長4.0~8.9ミリで、目が退化しており、体は半透明の白色。坑道内のほか、足羽山の山麓の地下水が湧き出る場所でも確認されている。坑道内で卵を抱えた個体も発見しており、今後さらに詳しい生態調査を進めていく。

 同博物館は17年から足羽山固有の生物やその生態を把握するため、坑道内の調査を進めている。梅村さんは「地域にとって身近な足羽山にもまだまだ新発見の余地があり、研究のフロンティアが広がっている」と期待している。

 同博物館で10月22日まで開催中の昆虫に関する特別展で、アスワメクラヨコエビの標本や写真、動画を公開している。期間中の土日祝日には生きた個体も展示する。問い合わせは同博物館=電話0776-35-2844。

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