<大学サッカー>J1鳥栖内定の法政大MF 渡邉綾平「すごくポジティブな大会だった」と総理大臣杯敗退も前を向く

大学サッカーの全国大会・総理大臣杯準決勝が8日に宮城県石巻市内(セイホクパーク石巻フットボール場)で行われ、法政大(関東第6代表)は富士大(東北第2代表)に0-0とPK戦(3-4)の末に敗退した。

この日キャプテンマークをつけて先発したJ1サガン鳥栖内定の法政大MF渡邉綾平は中盤で激しいデュエルを制し、鋭い直接フリーキックでゴールを狙うなど攻守において獅子奮迅のプレーを見せた。だが一時チームは2-0でリードするも、試合終盤に追いつかれてPK戦で惜敗した。

渡邉は「全国大会なのでいろんなチームが出てますけど、富士大さんはいままで対戦してきたチームの中でも読めなかった。何をしてくるのかあまり分からなかったというのが正直な気持ちです」と率直に対戦相手を振り返った。

今大会で快進撃を続ける対戦相手の富士大は全国大会初勝利を皮切りに、勢いそのままに決勝進出を果たした。東北のダークホースの躍進は多くのサッカー関係者を驚かせた。勢いのある未知の相手は法政大の猛攻を泥臭く防ぎ、食らいついた。

そして法政大も難しいレギュレーションの中で今大会を戦った。1回戦は関西大、2回戦は阪南大と関西の名門を立て続けに破ったが、3回戦は大雨の影響により試合開始当日にキックオフ時間の1時間繰り上げと会場変更を余儀なくされた。土砂降りの中で前大会覇者の国士舘大と死闘を繰り広げたため、イレブンは満身創痍の中で準決勝に臨んだ。

それでも背番号8は「イレギュラーな状況があった中でも国士舘さんに勝ち切れたというのは自分たちの自信にもなった。その中で自分たちのサッカーは、はっきりしていますし、全員が守備から入って球際も行くし、ルーズボールも怖がらずに行く部分は徹底できました。それをきょうもやって、いい攻防ができてたんじゃないかと思っています」とやり切った表情を浮かべていた。

法政大は後半25分、同29分に連続得点で決勝進出を手繰り寄せたが、富士大の猛反撃により同35分に1失点し、試合終了間際の同49分にラストプレーで同点に追いつかれた。

「2点取ってからも、そこまで緩みがあったとは思っていません。あまり後悔はないとは思うんですけど…。ただ決められたラストのワンプレーで少し(自分たち側に)ボロが出たというか。集中したつもりでしたけど、結果は結果なので、決められたという時点でどこかで…。試合の入りなのか、前日のミーティングなのか分からないですけど、何か足りないものがあったんじゃないかなと思いますね」

キャプテンマークを背負った副将は次に進むために敗因を冷静に見つめ直していた。

関東リーグでは同じ轍を踏まない

昨年開催の同大会初戦では東北の名門仙台大に0-1で敗退した法政大。そのときも試合終了間際の後半43分に被弾した。

「試合前は少しだけみんなに仙台大の話もして、『少し押している中で最後一発でやられた経験があったから警戒しよう』と話はしていました。試合に入ったら勝つことだけにこだわってやっていた」と昨年も8番を背負って先発した渡邉は、今大会では同じ過ちを繰り返さないよう努めていた。

だがラストワンプレーでの失点。決して法政大の守備が緩んでいたわけでもなければ、集中を切らさず激しく戦っていた。油断も慢心もなかっただけに、悔やまれる敗北となった。

「インカレ(冬の全日本選手権)出場権を取るために僕たちは大臣杯に懸けていた。試合が終わってから泣いてる選手も多くいましたし、あまり普段そういう姿を見せない選手もそういう姿を見せていたので…。本当にみんな大臣杯に懸けていたと伝わってきた。4年生という立場で、きょうはキャプテンマークを巻かせてもらいました。Jリーグクラブに内定した立場なので、本当にもっと上の景色をみんなに見させてあげたかったと、申し訳ない気持ちが強くあります」と唇をかんだ。

今大会も同じ轍を踏む形になってしまったが、名門法政大はただでは転ばない。現在関東学生リーグ1部では12チーム中10位と苦しい状況ではあるが、この敗戦を糧にして後期リーグ戦は反撃に打って出たい。

「ただこの大会を通して、やることをはっきりするとか、戦うところとかは、試合をやっていく中で全員が成長してきたと思う。すごくポジティブな大会だったと思っています。インカレでこの大臣杯の悔しさを晴らすために、(インカレ)出場権を取るためにも、突き詰めていくしかないです。リーグ戦が再開したら、そういうところを信じるしかないので、やっていこうと思います」

今大会で得た収穫と課題を突き詰めて関東で反撃の準備をする構えだ。

鳥栖を変えると決意を胸に

今年6月20日に鳥栖から渡邉の来季加入内定リリースが発表された。大学3年次の6月に鳥栖の練習参加で高評価を得たが、ケガの影響でシーズン初めのキャンプに参加できなかった。今年2月に開催されたデンソーカップも出場辞退したため、焦りはあったという。そして今年5月の鳥栖の練習に加わり、チャンスをつかむことができた。

渡邉は「(5月の練習参加)最終日にオファーをいただいた時はホッとした気持ちもありつつ、それ以上にポジションを取って今年中でもいいですし、来年の開幕戦でもいいです。早く鳥栖で活躍したいという思いはそのときからありました。嬉しい気持ちもありましたけど、それ以上に『やってやろう、自分が鳥栖を変えてやる』という強い気持ちを抱いたことを、いまでも覚えてます」と力強かった。

激しい球際の守備、判断のスピードも早く、危機察知能力も高い背番号8。自分自身のプレースタイルとチームの戦い方は「すごく合っている」と笑顔で口にした。

練習参加では自身のプレースタイルと似ている同じ大卒選手のMF河原創(福岡大出身)から大きな刺激を受けたという。

若くて才能があふれる選手が揃う鳥栖で活躍するには、より大きく成長しなければならない。残りの大学生活でさらなるレベルアップを目指している。

「大学サッカーの残り期間で、まだまだ成長させていきたい部分がある。いま同年代で代表に入っている選手や大学サッカーで最近のU-22代表に入った選手を見ると、何か1つはっきりとした特徴があると思う。自分もミドルシュートや、ゴールを取る特徴をもう1つ持たないといけない。地道にやるべきことをやれればいいと思っています」とさらなる進化を誓った。

渡邉が出場していた試合をYouTube配信で観戦していた鳥栖サポーターは複数人いるらしく、筆者の友人も「渡邉くんは鳥栖の未来!」と期待を寄せて観戦していた。背番号8にサポーターがこの試合を観戦していたと伝えると、「恥ずかしいですね。かなり恥ずかしいです(笑)」と凛々しかった表情が砕けた笑顔に変わった。

「優勝した姿を鳥栖サポーターの方々にも届けたかったという思いはもちろんあります。『きょう試合だよ』と法政のSNSから告知があるんですけど、そのときも鳥栖サポーターの方々がすごく反応していただけるので。そういう方々に見られているという意識は少なからずありました。その期待に応えられなかったことは、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいです。ただ自分が目指している場所は、『いまはJ1で活躍する』こと。そこがいまの段階で1番上のステージだと思っています。この悔しさを忘れず、次は駅前不動産スタジアムでその悔しさを晴らせるプレーも見せたいですし、勝ちを届けたい思いがあります」と、渡邉は鳥栖サポーターに向けて意気込みを語った。

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法政大の頼れる背番号8は総理大臣杯に敗れたが、それ以上に大きな収穫を得たように見えた。この先の関東学生リーグ1部、インカレ、そしてJリーグでこの敗戦から得た成果を証明する。

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