バイト+観光=移住促進 関係人口増へ、県の求人マッチング事業

客室を掃除する大学生の辻寛次さん=西川町・変若水の湯つたや

 県は本年度、隙間時間を利用したアルバイトのマッチングサービスを提供する企業と連携し、「やまがた暮らしプチ体験事業」を初めて実施している。県外の人に短期間働いてもらうだけでなく、観光や地元の人との交流を楽しんでもらい、将来の関係人口と移住の拡大を目指す。

 少子高齢化に伴う人口減少が深刻化する中、県は新型コロナウイルス禍をきっかけに、首都圏などの若い世代が地方移住に高い関心を寄せていると分析し、各種施策に力を入れている。

 県はタイミー(東京)と業務委託契約を結び、地方での就業機会提供・関係人口創出を目的としたサービス「タイミートラベル」を活用することにした。県単位での連携は東北初。酒田、上山、西川、最上、小国の5市町の事業者がイベント運営補助や料理店での調理補助、製造ラインの軽作業など15件の求人を出し、約30人が1週間ほど働く見込み。既に締め切った求人への応募の倍率は4~5倍。事業主から報酬が支払われ、タイミーから旅費(実費の上限3万円)が補助される。

 西川町の月山志津温泉「変若水の湯つたや」では都内の早稲田大3年辻寛次さん(20)=岡山県出身=が4日から6泊7日の日程で、清掃や配膳などに従事している。以前から東北地方に興味があったといい、町総合開発社員宅に寝泊まりし、休日には月山登山や温泉を満喫した。「普段とは違う土地で働くのは新鮮で、町の人との交流も楽しい。次は月山で夏スキーをしたい」と語った。

 つたやの求人2人には20人弱の応募があり、志田大輔社長(45)は「人手が集まらない中で倍率の高さに驚いており、大変助かる」と喜ぶ。一方で、地方に来てくれた働き手をリピーターや定住に結びつけるには滞在時の休日のサポートや宿泊場所の整備など各自治体の努力が必要と考える。

 タイミー担当者は「事業が働き手と地方がつながるきっかけになれば」と話し、県移住定住・地域活力創生課の小山田隆文課長補佐は「山形暮らしの魅力に触れ、本県と絆で結ばれた人が増えてほしい」と期待を口にした。

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