青森ねぶたの経済効果東北トップ 六大夏祭り調査/295億円 コロナ前超え

4年ぶりに通常開催となった青森ねぶた祭は東北トップの経済効果となった=8月6日、青森市

 今夏の東北の主要な夏祭りは新型コロナウイルス感染症の5類移行により、通常開催となった。七十七銀行グループの七十七リサーチ&コンサルティング(77R&C、仙台市)がまとめた東北六大祭りの「推計観光消費額(経済効果)」は青森ねぶた祭が295億円でトップとなり、コロナ禍前を上回った。田口庸友(やすとも)首席エコノミストは「コロナ禍での貯蓄を使うリベンジ消費、インバウンド(訪日客)効果などの好条件も重なり、県外客の誘引力が強いねぶた本来の力が発揮された」と分析する。

 推計観光消費額は入り込み客数のほか、宿泊・日帰り客の消費額など過去の実績を基に試算し、コロナ禍前の2019年と比較した。

 青森ねぶた祭の入り込み客数は今年から人工知能(AI)集計に変更となり、前年より64.6%の大幅減となったが、人流などの各種データ、ヒアリングを基に19年の285万人と同数として推計した。

 19年比で推計観光消費額が増加したのは、青森ねぶた祭と仙台七夕まつりのみだった。トップの青森ねぶた祭の295億円は19年と比べて5.3%増加した。2位は仙台七夕まつりで7.8%増の207億円だった。物価高による消費単価の上昇、猛暑による避暑需要なども寄与した。

 田口氏は「青森ねぶたはハネトの自由参加が解禁となり、体験型の祭りの本来の力を取り戻し、夜の飲食、宿泊客が増えた。消費単価の高い県外客やインバウンドの呼び込みに成功した」と分析した。仙台七夕まつりは、東北最大の都市であるという利点から、県内の日帰り客とともに、県外客やインバウンドが増加した-とみている。

 盛岡さんさ踊りは、米紙ニューヨーク・タイムズに「2023年に行くべき52カ所」と掲載された効果で欧米からの観光客が増え、推計観光消費額は0.4%減の94億円で、コロナ禍前とほぼ同水準となった。秋田竿燈(かんとう)まつりは開催直前の豪雨被害の影響により、コロナ禍前の水準を取り戻すには至らなかった。

 今年からAI集計となった青森ねぶた祭の入り込み客数は、前年より大きく減り、単純比較ができなくなった。しかし、田口氏によると、祭り開催時期の8月第1週の県外居住者の人流(滞在人口推計値)データを見ると、東北の主要駅の中で新青森駅が19年比61%増と、突出して伸びたことが明らかになった。ほかに19年比で増加したのは盛岡駅で23%増だった。

 田口氏は「コロナ禍で減少した反動で、人流が大きく増加したと考えられる。ねぶた祭の集客力は本来の姿に戻った。来年は反動減となることも懸念されるが、体験型のねぶた祭を一層楽しめる付加価値の高いサービスを開発して持続性を高め、東北の夏祭りをけん引していくことを期待する」と語った。

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