【MLB】エンゼルスにトラウト放出の可能性と報道 考えられるシナリオは?

写真:現在故障者入りしているマイク・トラウト

9月10日(日本時間11日)、『USAトゥデイ』のボブ・ナイチンゲール記者は「マイク・トラウトが移籍を希望する場合、エンゼルスはトレードを容認する姿勢だ」と報じた。

エンゼルスは8月31日にウェーバーで主力を大量放出した。今オフFAになる選手たちの放出は自然な流れではあったが、9月2日にはトラウトがオフシーズンにエンゼルス首脳陣と話し合いの場を持ちたいという意向を示していた。今後のチーム方針を確認するための話し合いだと予想されるが、トラウト本人に移籍の意思があるのかまでは不明だ。

トラウトの放出は容易ではない。2019年シーズン開幕前に12年4億2650万ドルという巨額契約を結んだトラウトには全球団に対するトレード拒否権があり、エンゼルス側が放出を望んだとしてもトラウト本人が頷かない限りトレードが実現しないからだ。

また、トラウトのトレード価値も以前と比べて低下している。2012年から2020年までの9シーズン連続でMVP投票5位以内、そして3度のMVPを受賞するなどMLB最高の選手として活躍してきたトラウトだが、直近3シーズンは合計237試合の出場にとどまっており、規定打席にも到達できていない。全盛期と比較すると怪我での長期離脱が増えており、今季も7月3日のパドレス戦で有鈎骨骨折し長期離脱。8月22日に復帰したものの1試合に出場しただけでまた故障者リストに戻った。

健康な状態で試合に出れば今でもリーグ有数の打撃力を発揮することができるが、故障の多さ故に巨額の契約に見合うほどの活躍とは言えなくなってきている。トレード価値は選手のパフォーマンスと契約の金額に応じて判断されるもので、来季から7年2億4815万ドルもの契約が残っていることがネックだ。

こういった高額契約選手を放出する場合、放出球団はある程度年俸を負担する必要がある。近年起こった代表的な例は現在カージナルスに所属するノーラン・アレナドだ。2019年シーズン開幕前、アレナドは当時所属していたロッキーズと8年2億6000万ドルという巨額契約を結んだ。しかし、チーム事情とアレナド本人の希望もあり2021年シーズン開幕前にカージナルスへのトレードが実現。その際ロッキーズは5人の選手を見返りに獲得したが、残るアレナドの契約のうち5100万ドルを負担する形になった。

今回トラウトを放出するのであれば、アレナドの時のロッキーズのようにエンゼルスも残りの契約のうち数千万ドルから1億ドル以上を負担する必要が出てくるだろう。また、その金額はどういう若手有望株を見返りで欲しいかによって変動する。今夏のトレード期限で、メッツはマックス・シャーザーとジャスティン・バーランダーの2人の選手を放出した。いずれもMLB最高年俸を誇る投手だったが、メッツは彼らの残り年俸のうち半分以上を負担。その代わりにMLB公式の有望株ランキングでトップ100にランクインするほどの若手有望株の獲得に成功。これは豊富な資金力を誇るメッツならではのやり方だったが、エンゼルスもトラウトの見返りとして評価の高い若手有望株を得たいのであれば、多額の年俸負担をしなければいけないかもしれない。

また、トラウトの放出はすなわちエンゼルスが完全な再建期へと向かうことを意味する。MLBの球団が再建期に入る際は、主力選手の多くを放出し、見返りに若手選手を獲得。再び勝負する時まで、地区下位に沈みながらも若手の成長を見守る時期が続くのだ。毎年補強を繰り返してきて結果が出てこなかったエンゼルスだが、大谷翔平がFAになるタイミングで再建期に入るのであれば理にかなっている。

もしトラウトの放出が現実的なものになるのであれば、優勝を狙える球団で戦いたい大谷との再契約も難しくなるだろう。エンゼルスの未来についても、大谷の残留の可能性についても、カギを握るのはトラウトの動向になるのかもしれない。

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