ゆかりの青森・田子町も喜び 故相米慎二監督「お引越し」、ベネチア映画祭で最優秀復元賞

 第80回ベネチア国際映画祭(イタリア)で、青森県田子町ゆかりの故相米慎二監督がメガホンを取った「お引越し」の4Kデジタルリマスター版が、同監督の命日に当たる現地時間9日、クラシック部門で最優秀復元映画賞を受賞した。同町では毎年、相米監督の魅力に迫る映画祭りを開催、「映画監督相米慎二を語りつぐ会」代表の山本晴美町長は「映画公開から30年、監督が亡くなって22年、あらためて作品が評価され、非常に喜ばしい」と話した。

 「お引越し」は同監督10作目で1993年の作品。田畑智子、中井貴一、桜田淳子らが共演、小学6年生役の田畑が離婚目前の両親の間で成長していく姿を描き、公開年にカンヌ国際映画祭(フランス)の「ある視点」部門にも出品。今回は最新技術による美しい映像で復元・公開された。

 今年の田子町での映画祭にゲスト出演した映画ジャーナリスト金原由佳さんは、昨年の東京国際映画祭で、お引越しの撮影監督を務めた栗田豊通さんが同映画の4Kデジタルリマスター版を手がけているとの情報を得て、注目していたという。X(旧ツイッター)で昨日、祝意を投稿した金原さんは取材に「今、映画ジャーナリストとして活動できているのは、お引越しを運命的に見たおかげ。相米監督は師匠」と話し、「リマスター版が評価されたのはもちろん、元の作品が素晴らしかったから。ベネチアではもっと知られても良い映画監督との声が上がり、国際映画の世界での新発見になったのでは」と話した。

 相米監督は父が同町出身。中央大中退後に映画の道に進み、「セーラー服と機関銃」など13作品を残し2001年9月9日、肺がんのため53歳で死去した。生涯独身を貫き、遺骨は同町にある先祖代々の墓に納められている。

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