フィリピン経済区庁(PEZA)は11日、日本企業4社から計108億ペソ(約278億円)の投資確約を取り付けたと発表した。主に電子部品や医療機器の工場拡張となる。外資企業の誘致に積極的なマルコス政権や国内経済の安定で投資環境が改善していることが背景にある。日本は同庁からの投資認可額が国別で最も多く、税優遇措置の縮小という問題を抱えながらも投資が活発になっている。
パンガ長官を団長とする使節団が先月末から今月初めにかけて日本で投資を呼びかけ、経済区庁に登録する4社が追加投資を明らかにした。電子部品大手TDKは72億ペソを投じてマニラ首都圏南方のラグナ州に構える製造拠点を3年かけて拡張する。
電子部品の太陽誘電は2024年にかけて16億ペソを投じる。同社は中部セブ州ラプラプ市に工場を構えている。
医療機器大手のテルモとめっき処理装置を手がけるアルメックステクノロジーズ(栃木県鹿沼市)はそれぞれ10億ペソを追加投資する。アルメックスは12月に首都圏南方のカビテ州で新棟の稼働を予定している。
パンガ長官は「電子業界をはじめ先端技術の需要が高まっている。積極的に投資を誘致していきたい」と話した。
投資以外にも、システム開発のネオジャパン(横浜市)とITシステムの開発と導入に関する基本合意を交わした。組織の情報共有や業務効率化のアプリ「デスクネッツNEO」などを用いて実証実験する。
経済区庁によると、23年1月~9月上旬のフィリピンの投資認可額は1,112億ペソだった。国・地域別の割合は日本が全体の27.3%を占め最も多く、付加価値の高い投資が期待されている。
経済区庁の管轄外でも日本企業によるフィリピン投資は活発だ。トヨタ自動車のフィリピン法人フィリピントヨタ自動車(TMP)は8月、ラグナ州の工場に44億ペソを追加で投資することを明らかにした。新たな車種の組み立てを始める。
マルコス政権は昨年6月末の就任以来、積極外交で外資投資の誘致に注力している。付加価値税(VAT)の問題をはじめ税優遇措置の縮小や急な方針転換は企業の懸念材料となるが、フィリピンは経済成長率が周辺国と比べて高く、リスク分散などの観点からも投資の選択肢になっているようだ。