強敵と連戦、戻る相撲勘 朝乃山、負傷で吹っ切れる

 手負いの中で強敵と連戦したことが元大関の力を引き出した。しばらく大相撲のトップレベルから遠ざかっていた朝乃山は先場所から三役との対戦が本格化。「上を目指す上では負けられない」との気負いが硬さにつながっていたが、先場所の負傷を契機に「負けてもいいや」と吹っ切れたという。役力士との「真剣勝負」に集中できるようになると、これまでと見違える厳しい相撲で白星を並べる。

 「元々ある力が戻ってきた」。11日、土俵下で朝乃山と琴ノ若の取組を見守った浅香山審判長(元大関魁皇)は元大関の気迫のこもった相撲に変化を感じ取った。

 朝乃山は先場所で左上腕を負傷し途中休場。12日目から再出場すると関脇や大関を下す4連勝で勝ち越しを決めた。けがは完治しておらず、痛々しいサポーターが目立つ。夏巡業で右足親指も痛め、場所前の調整不足は否めなかった。

 初日に若元春を厳しい攻めで下した後、朝乃山は「万全じゃないから思い切っていける。先場所終盤の4日間もそんなふうにできた。吹っ切れた気持ちでいきたい」とすがすがしい表情を浮かべた。

 2日目の琴ノ若戦はこの日一番の歓声を浴びた。琴ノ若とは幕下時代の2016年5月場所で、「石橋」と「琴鎌谷」として対戦以来、約7年ぶりの顔合わせ。朝乃山はその一番を覚えており「右四つになり、僕が出ていったところで上手投げで決めた。今日みたいな感じ」と振り返った。

 朝乃山は先場所の再出場以降、6戦6勝とし関脇、大関を4回撃破。浅香山親方は「1場所ごとになじんできて、相撲も動きもよくなっている」と指摘する。

 一方で朝乃山は「まだ2日目。始まったばかり」と謙虚に受け止める。それでも大関候補とされるホープとの厳しい戦いを乗り越え「こういう相撲を取っていると相撲勘が戻ってくる」と語り、手応えを感じていることをうかがわせた。

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