【台風13号】14人孤立、断水 一本道、土砂ふさぐ 茨城・日立の沢平地区

倒れた電柱と流入した土砂でふさがれた市道=11日午前10時24分ごろ、日立市十王町高原

台風13号に伴う大雨の影響で、8世帯14人が孤立状態となっている茨城県日立市十王町高原の沢平地区。街へ下りる一本道の市道は土砂流入や路面陥没で通れなくなり、9日からは水道も止まった。生活道路が断たれ、住民は「袋小路のように取り残された」。同地区へつながる別地区でも土砂崩れが起きており、孤立解消の見通しは立っていない。

市によると、同地区住民は平時、市道を約1.6キロ下りて隣の藤坂地区まで行き、同地区に接続する県道や広域農道から市街地へ向かう。

今回の大雨で、沢平地区につながる市道約1.6キロの大部分は土砂で覆われ、巻き込まれた乗用車が動けなくなったり、電柱が根元から折れて路面をふさいだりしている。

地区住民によると、電気とガスは供給されているものの、約50年前に敷設された簡易水道が9日昼から止まったまま。水道は神峰山にある水源から引いたもので、市内事業者が管理している。地区内の高台に貯水タンクはあるが、断水の原因は不明。市道が寸断されているため、事業者も原因を特定できず、水道の復旧は早くても12日以降になる見通しという。

同地区で暮らす田所行雄さん(95)は11日、「地区が孤立したのは初めて。何よりも水が出ないことが困る」と不安そうな表情を浮かべた。親族から届けられたペットボトルの水でしのいでいる。「山奥なのでコメは常に備蓄している。ただ、水がないとご飯が炊けなくなってしまう。届いた水を大切に、大切に使っている」と語った。

別の男性(74)は「生活道路が寸断されているのが苦しい」と語り、知人の協力で食料品などを調達した。男性は土砂崩れがあった市道を下って買い物袋を受け取り、土砂に覆われた道路を戻ったという。

一本道で沢平地区とつながる藤坂地区でも市道3本が土砂崩れで通行止めとなっており、同地区の市道が開通しなければ沢平地区の市道復旧工事が始められない状況だ。

3本のうち1本の復旧作業に当たる男性作業員は、沢平地区の市道について「工事完了の時期は全く見通せない」と険しい表情で話した。

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