介護福祉士、養成ピンチ 全施設で入学者定員割れ、閉校も 青森県内

 青森県内の介護福祉士養成施設の多くが入学者の確保に苦戦している。全5施設で本年度定員割れになった。少子化の影響のほか、「きつい」「給料が安い」といった介護職のマイナスイメージが、入学者減少の背景として指摘されている。弘前厚生学院は2024年度、学生の確保が難しくなっていることなどを理由に学生募集を停止する。県内関係者は「介護の専門知識を身につけた人材の減少は、介護サービスの質的・量的な低下を招く」と危機感を抱く。

 県内の介護福祉士養成施設は16年度、7施設が学生を募集していたが、現在は5施設に減った。東奥保育・福祉専門学院(青森市)が17年度から、八戸社会福祉専門学校は20年度から募集を停止している。

 「介護の負のイメージが先行し、正しい認識がなされていない」

 弘前厚生学院介護福祉科の片川ひろえ学科長は現状を嘆く。同学院の本年度の入学者は定員15人に対して12人。同学院は「少子化により学生の確保が難しくなったこと」などを理由に、来年度から学生の募集を停止し閉校する予定。県内の養成施設は4施設になる。

 県内関係者は養成施設や学生の減少に危機感を抱く。弘前医療福祉大学短期大学部別科介護福祉科の本年度の入学者は、定員30人に対して13人。中村聡別科長は「若い介護人材が不足することは介護サービスの質的、量的な低下を招き、いずれは介護保険制度そのものの継続が難しくなる」と危惧。弘前厚生学院の学生募集中止については「非常に残念で寂しい限り」と述べた。

 県内の介護福祉関係者も先行きを不安視する。八戸市の特別養護老人ホーム瑞光園の澤田章施設長は「これからの高齢社会を支える介護福祉士の養成が滞ることは大きな社会問題。国単位で養成校の経営に関して補助や助成を行うことも施設存続の一つの方法」と語る。

 階上町などで介護施設を運営し、人材育成にも力を入れる株式会社リブライズの下沢貴之代表は「介護は給料が安い、誰でもできるというイメージが根強い。その中で若者が介護職に就きたいという動機は生まれない」と述べ、「介護職の給料を上げる取り組みや、介護職がリスペクトされる社会的な雰囲気づくりが求められている」と語った。

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介護福祉士 介護の専門知識と技術がある人を認定する国家資格。高齢者らの生活支援に加え、現場でヘルパーをはじめ他の職員を指導する中核的な役割が期待されている。登録者数は、2023年3月末時点で約188万1800人。取得するには、3年以上の実務を積んで研修を終えた後に国家試験に合格したり、養成施設を卒業して試験に合格したりするなどのルートがある。

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